元気な小学一年生・かのこちゃんと優雅な猫・マドレーヌ夫人。
その毎日は、思いがけない出来事の連続で、不思議や驚きに充ち満ちている。
珠玉の名品!
すみません、万城目学さんをなめてました。
先月のこと、書店でこの本を見かけ、
「あれー、ホラフキ万城目さんの小説がまた出てるぞ。
へえー、筑摩書房から、しかも新書!? 変なのー。」
と思いながらも買って、でもずっと積んでいたのですが、
昨日なにげなくトイレで(トイレかよ)読み始めたら止まらなくなりました。
風呂でも読んで、寝床でも読んで、一気に読み終えて、心の中で叫びました。
大傑作じゃー!
ほんとは口に出して叫びたかったけれど、夜中だったのでやめました。
ホルモーも鹿男もプリンセス・トヨトミも面白かったけれど、
さらに素晴らしかったでありますっ! 感動したでありますっ!! 文句ありませんでありますっ!!!
けっして子供向けのお話ではなく、かつて子供だった大人のための小説といえましょう。
タイトルから想像されるほど甘いお話ではありません。
小学一年生のかのこちゃん、同級生のすずちゃん、猫のマドレーヌ夫人、犬の玄三郎たちの、
出会いと別れと成長が、ユーモラスかつ軽やかにつづられます。
いくつもの別れに涙しながらも、前を向いて成長してゆくかのこちゃんの姿、たくましくも爽やかです。
読み終わって思うのは、
「モーツァルトの音楽のような小説」。
一見軽くて、わかりやすくて、遊び戯れているようだけど、哀しみや死の気配もそこかしこに。
でも根本的には前向きで真摯。
無駄に長くなく、綺麗にすっきりまとまっているのも素敵です。
末永く読み継がれるに足る名作小説の誕生だと思います。
「猫文学」としても、かの「吾輩は猫である」 「ジェニィ」」などに引けを取らないレベルに達しているのではないかと。
また、全体にただようほのぼのとした雰囲気は、「ノンちゃん雲に乗る」を連想させます。
「鹿男あをによし」と、ちょっとだけリンクしているのも楽しかったです。
かのこちゃんのお父さんは、どうやらあの人のようですね。
(10.3.19.)
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