ジャン・フランセ/管楽器のための室内楽作品集
(アンサンブル・ウィーン・ベルリン 1999録音)



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ジャン・フランセ(1912〜97)の音楽を聴くと、なんかほっとするんですよね〜。
前衛の嵐が吹き荒れた20世紀のフランスで、現代音楽には見向きもせず調性の枠内で自らの芸術を追求した硬骨漢。

 四重奏曲 第1楽章(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットのための)
 (なにこのお洒落な曲!!)

ジャン・フランセは1980年代、オリヴィエ・メシアンや映画音楽で有名なジョルジュ・ドルリューと並んで、
自作の著作権のみで生活できる数少ない作曲家だったそうです。

一聴、軽くて軟弱な印象ですが、20世紀にこのスタイルを貫くには強固な意志が必要だったはず。
無調もトーン・クラスターも特殊奏法も使いませんが、決して古臭くありません。
聴いた瞬間フランセだとわかる軽妙なサウンドからは都会的な洒落っ気が香り立ち、田舎者の私にはまぶしうございます。

 オーボエ、ファゴット、ピアノのための三重奏曲 第2楽章 スケルツォ
 

モーリス・ラヴェルは少年時代のフランセに会ったとき、彼の両親にこう言ったそうです。
 「この子の才能のうちで、私が見る限り、一人の芸術家として最も将来が有望視されるのは、旺盛な好奇心に恵まれているということです。
 くれぐれも親御さんが、かけがえないこの才能を潰したり、坊ちゃんの感受性をしなびさせたりしませんように」

 恋人たちの黄昏時(フルート・オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット、ピアノのための)から第2曲「ピンナップ・ガールズ」
 (クラリネットが気ままにそぞろ歩くノンシャランなナンバー)

フランセ曰く
 「ベルリオーズやドビュッシーの不遇は、理解されないが為であったけれども、私の場合はむしろ簡単に理解されてしまうという不遇さがある」

 フルートとピアノのためのディヴェルティメント より第1楽章「トッカッティーナ」
 

フランセは、聴く人にも演奏する人にも「喜びを与えること」を作曲理念としたそうです。
聴くほうは確かに楽しいですが、何気に超絶技巧がちりばめられていて演奏するほうは息も絶え絶えだったりして。
しかしこのCDに限り心配はご無用、アンサンブル・ウィーン・ベルリンは超一流演奏家の集まりです。

 ヴォルフガング・ショルツ(フルート)
 ハンスイエルク・シェレンベルガー(オーボエ)
 カール・ライスター(クラりネット)
 ミラン・トゥルコヴィッチ(ファゴット)
 シェテファン・ドール(ホルン)


・・・すげえメンツだな。

正直、プーランクなどに比べて知名度も人気も少ないフランセですが(CDも少ない)、
どの曲も明快であっからかんとしていて、「翳り」「陰影」「感傷」などの成分が不足しているためかもしれません。
音楽史上で重要なのはもちろんプーランクのほうでしょうけれど、
私は、ときに深刻で不機嫌になるプーランクよりも、明るくウィットに飛んだフランセのほうが好きなんですよね。

(2024.11.21.)


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