レイチェル・ポッジャー/ヴィヴァルディ協奏曲ボックス(7枚組)
Tower : ポッジャー/ヴィヴァルディBOX
<曲目>
協奏曲集 作品4「ラ・ストラヴァガンツァ」
協奏曲集 作品9「ラ・チェトラ」
協奏曲集 作品3「調和の霊感」
協奏曲集 作品8「和声と創意への試み」より「四季」ほか
レイチェル・ポッジャーがチャンネル・クラシックスに録音したヴィヴァルディの協奏曲をドカンと詰め込んだ7枚組です、もってけドロボー!
「ラ・ストラヴァガンツァ」だけ持ってましたが迷わず購入。
やっぱり良いですねー。
ヴィヴィッドにして端正、たっぷり情緒を湛えつつ、即興的な遊びもあれば、エモーショナルな「うた」もあり、
すっきりした均整のなかで弾力のある音世界が展開されます。
ただしどんなにノッても羽目を外すことはありません。
古楽器によるヴィヴァルディ演奏の王道のド真ん中を軽やかに駆け抜けます。
昨今、古楽器によるヴィヴァルディはルール無用のバトルフィールドというか、ロックみたいな肉体武闘派演奏がもてはやされるきらいが無きにしも非ず。
しかしポッジャーは、ビート感、グルーヴ感、スピード感を過不足なく備えながら、過度に刺激的ではないところがクレバーです
(べ、べつに肉体武闘派演奏の方々はバカだといってるわけじゃ・・・!)。
「清く正しく美しいポッジャーお姉さま素敵!」と瞳をハートにしながら聴きました(←キモイ)。
もちろん、「なにを優等生ぶってんだよ、ケッ」という方もおられると思います、感じ方はそれぞれです。
さて、いろんな演奏を聴き比べるのが楽しいヴィヴァルディ。
自由度が高く、演奏者によってそれぞれの解釈があります。
たとえばレイチェル・ポッジャーとモダン楽器バロックの雄、イ・ムジチとの聴き比べ。
ラ・ストラヴァガンツァ第10番 第3楽章(レイチェル・ポッジャー vs イ・ムジチ) | |
軽いステップで跳ねるようなポッジャーと、重厚でしっとりしたイ・ムジチ。
イ・ムジチのロマンティックな解釈はいかにもひと昔前って感じですが、これはこれでやっぱりいいですね。
20世紀はこういう演奏スタイルが主流だったのです。
あるいはロックなノリで一世を風靡したファビオ・ビオンディとの聴き比べ。
ラ・ストラヴァガンツァ第1番 第1楽章(レイチェル・ポッジャー vs ファビオ・ビオンディ) | |
ビオンディはやっぱりロックです、タテノリです、しかもべらぼうに上手いなやっぱり。
ポッジャーの穏健さが際立ちます。 もちろんこちらも水際立ったテクニック。
ビオンディでもうひとつ。
調和の霊感 第10番 第1楽章 (レイチェル・ポッジャー vs ファビオ・ビオンディ) | |
ほぼインテンポで流れるようなポッジャーに対し、テンポ・強弱を大きく揺らすビオンディ、自由な装飾音も多めです。
ビオンディのほうが面白いけど、あざといとも言えますね。
バロック過激派集団、イル・ジャルディーノ・アルモニコはどうでしょうか。
「四季」より「冬」第1楽章(ポッジャー vs イル・ジャルディーノ・アルモニコ) | |
・・・ほとんど現代音楽じゃねーかイルジャリ、明らかにやりすぎです。 面白いけどね。
ポッジャーも激しめですが、イルジャリと比べれば正統的で、しかも充分刺激的。
どれも定評のある名演奏ばかり。
とっかえひっかえ聴き比べができるなんて、贅沢な時代になったもんです、ありがたや。
(2023.04.28.)
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