モーツァルト/ヴァイオリン・ソナタ全集(8枚組)
(レイチェル・ポッジャー&ゲイリー・クーパー 2004〜2008録音)



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オリジナル楽器によるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ全集の最高峰!


モーツァルトのヴァイオリン・ソナタ、ときどき無性に聴きたくなります。
やはりモーツァルトは唯一無二、代替物はありません。
もともと「ヴァイオリン・オブリガードつきのフォルテピアノ・ソナタ」であり、ヴァイオリンは出しゃばりすぎず、寄り添うかのよう。
ピアノもベートーヴェンほど雄弁でなく、端正でひそやかなたたずまい。
でも、確かな力を持った傑作ばかり。

いまCD棚を眺めると、全集・選集ひっくるめて5種類ほどの演奏を持っていますが(われながら多くてびっくり)、
いちばん最近購入して「大当たり」と悦に入っているのが、
レイチェル・ポッジャーのヴァイオリン、ゲイリー・クーパーのフォルテピアノによるボックスセット(8枚組)。

レイチェル・ポッジャーといえば、バロック・ヴァイオリンの第一人者と言っても過言ではない偉い人。
一部の古楽器奏者のように奇をてらった鋭角的な演奏ではなく、
英国人らしい知的で趣味の良いアプローチと、活力みなぎる演奏で明るく魅了してくれます。

フォルテピアノ奏者のゲイリー・クーパーは、「真昼の決闘」で有名な往年の映画俳優と同姓同名。
両親はどういうつもりで名前をつけたんだろうと、そっちのほうが気になります。

さて演奏ですが、フォルテピアノの平べったい音に違和感を感じるかどうかで評価が分かれそう。
フォルテピアノは、現代のピアノに近い響きのものから、「鼻が詰まったチェンバロ」のようなものまで、楽器によってかなり音が違います。
演奏者は考えた末に選んでいるのでしょうが、どうしても馴染めないことがたまにあるのは事実。
もちろんグランドピアノとはまた違った繊細なニュアンスを聴かせてくれる場合が多くて、それが魅力です。

 ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 K.306 第1楽章
 

この録音で使われているフォルテピアノは、1795年ウィーン製の楽器を複製したもの。
最初は「うわ、ペナペナした音!」と思いましたが、 聴いているうちにだんだん良くなってきました。
軽く跳ねるような可愛らしい音であり、強奏でもヴァイオリンの邪魔をしません。
ポッジャーのヴァイオリンは、どの曲でも安定の美しさで、端正の極み。
良い意味でとっても素直であり、作為や技巧をひけらかすことはありません。
それでいて単調でも平板でもなく、一貫して明るく楽しく朗らかです。

もともと1枚ずつレギュラー価格で出ていたCDですから、このボックスは超お買い得!
全8枚と大部なのは、初期作品から変奏曲までヴァイオリンと鍵盤のための二重奏作品をすべて収めているから。
ただしブックレットは不親切で、各CDの曲名は書かれていてもトラック番号がありません。
いまどの曲なのかは、カンで推測する必要があります。

 ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.378 第1楽章
 

(2016.09.04)


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