エンリコ・ガッティ/人の声のごとく〜アルカナ・レーベル全録音(13枚組)
Amazon : 『人の声のごとく』 エンリコ・ガッティ ARCANAレーベル全録音
Tower : 人の声のごとく〜エンリコ・ガッティ ARCANAレーベル全録音
バロック・ヴァイオリン奏者エンリコ・ガッティ(1955〜)が、1994年から2016年にかけてアルカナ・レーベルに録音した13枚のディスクをまとめたボックス・セット。
ファンにとっては「持ってけドロボー!」と叫びたくなるようなとんでもないセットです。
私なんて13枚中9枚すでに持ってますからね、嬉し涙と悔し涙を同時に流しながら買いましたよ、器用でしょ。
人の声のごとく〜アルカナ・レーベル全録音(13枚組)
バロック・ヴァイオリニストの方々というのは、
触ると火傷しそうなテンション高いキレキレ演奏をしたり、
「これはロックですか?」と言いたくなるようなタテノリ上等パフォーマンスをしたり、
かと思うと学者が弾いてるのかと思うほど真面目で几帳面で堅苦しかったりすることもあります。
総じてモダン・ヴァイオリン奏者にくらべ個性的でキャラの立った演奏をする人が多い印象です。
エンリコ・ガッティのヴァイオリンの特徴は、明るくてうたごころに満ちていること。
陽気でほがらか、ときに能天気です。
もちろん技術は一流、解釈は正統であり、その上に余裕と遊び心のトッピングが乗ってる感じ。
メロディやちょっとしたフレーズにいかにもイタリアっぽいソノリティが垣間見えるところがたまらなく魅力的と、イタリア行ったことない私が断言します(説得力が)。
まさに「人の声のごとく」歌うヴァイオリンを堪能できます。
ヴェラチーニ/ヴァイオリン・ソナタ第2番 ホ短調 第1楽章 (この曲優美で大好き!)
ノリは良いですが刺激的なところはありません。
ガッティはかつてライナーノートに「遅さ礼賛(In Praise of Slowness)」というエッセイを書いていて、ゆっくりした演奏の良さについて語っています。
古楽シーンの一部に流行していた、ロックみたいなアグレッシブな演奏に対するアンチテーゼです。
良いワインはぐびぐび飲むのではなく、一口ずつじっくり味わって飲むべきだ、と (まあ、アグレッシブな演奏もあれはあれで面白いですが)。
コレルリ/トリオ・ソナタ作品3−2 第2楽章 (アレグロなんですが、余裕のあるテンポ感)
そんな「大人のバロック音楽」を堪能できるボックスセット。
バロック音楽好きなら、買って損はありません。
ちょっと上等なワインをちびちび飲みながら聴きましょう。
コレルリ/ヴァイオリン・ソナタ作品5−7 第1楽章 (ヴィヴァーチェですが優美です)
ほとんどすべてイタリア・バロックですが、バッハ「音楽の捧げもの」とモーツァルトのヴァイオリン・ソナタだけがドイツもの。
そしてこれらがまた素晴らしいのです・・・。
バッハ/音楽の捧げもの トリオ・ソナタ 第2楽章 (言わずと知れた名曲。心地よいテンポ・緊密なアンサンブル、じつにしっくりきます)
(2021.10.03.)
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