森博嗣/つぶやきのクリーム & つぼやきのテリーヌ
(講談社文庫 2012年、2013年)

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夜、寝床に入って電気を消す前に、ほんの30秒でもいいから、本を開いて活字を目で追わないと落ち着かない。
これは人類社会において比較的メジャな習慣なのか、きわめてマイナな性癖なのか、すでに病気疾病の範疇なのか、
僕は知らないし知っても何かが変わるわけではない。
僕にとって、つねに眠る前に読む本が必要であるという厳然たる事実は同じだ。

最近、「入眠儀式本」として重宝しているのが、森博嗣のエッセイだ。
この人のミステリ・シリーズをフォロゥしなくなってずいぶん経つけれど(ミステリ以外の小説は今も面白いと思う)、
エッセイはどれも素晴らしい。

とくに、「つぶやきのクリーム」「つぼやきのテリーヌ」2部作が気に入っている。
一編がちょうと見開き2ページで、1冊に100のエッセイが収められているので、計200編。
1日に3〜5編ずつ読んでも1か月以上かかる。
読み終わって、最初のエッセイをもう一度読んだら、すっかり忘れていたので新たな気持ちでまた読んだ。
じつに経済的だと思う。

森氏によると「小説に比べてエッセイは全然売れない」そうだが、森氏の作品で読むべきは小説ではなくむしろエッセイだろう。
小説に書いてあることは言ってしまえば嘘ばかりだが、
エッセイは、この独特の視点と思考回路を持つベストセラ作家が、
自己の内面をかなり本音に近いところまでさらけ出して書いている。
その客観的で抽象的で合理的な屁理屈・・・、失礼、考え方はどれもみな一理あり、
場合によっては二理三理、千里の道も五十歩百歩(←特に意味はない)。
「この広い世界にはこういう考え方をする人もいるのだなぁ」と、
ときに感心し、ときに呆れ、ときに笑い、ときにむかつきながら読む。
リズミカルな文章は脳内を心地よく刺激してくれる。

おかげさまで今夜もよく眠れる。

(2014.4.27.)


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