ボリス・チャイコフスキー/ピアノ協奏曲、英国の主題による奇想曲、管弦楽のための詩曲「未成年」
(ボリス・チャイコフスキー:ピアノ フェドセーエフ指揮 モスクワ放送交響楽団)



Amazon : Boris Tchaikovsky Piano Cpncerto



ボリス・チャイコフスキー
(1925年9月10日〜1996年2月7日)、略してボリチャイ、2025年は記念すべき生誕100年です!

しかし・・・

 全く盛り上がっておりません!! (まあ私も今日まで忘れてたもんな)

6歳年上で同じ年に亡くなった盟友 ミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜96)が近年再評価著しいのに比べ、かなり寂しいです。

ナチスに追われて命からがらポーランドを逃れてきたユダヤ難民のヴァインベルクが、悲哀と絶望の中に一抹の光をともすようなシリアスな作品を書き続けたのに対し、
モスクワで生まれモスクワ音楽院でショスタコーヴィチに師事というエリートコースを歩んだボリチャイの作品は、クールで都会的で皮肉っぽいのが特徴。

 はっきり言えばちょっとひねくれてます。

例えばこの曲

 ピアノ協奏曲(1971) (作曲者自身の独奏)
 

ピアノで呈示される第1楽章の主要主題は

 「ソソソソソソソソ ソソソソソソソソ」

・・・馬鹿にしとるんかい!! 
と怒りたくなりますが驚くなかれ、なんと同音反復で1楽章まるまる持たせてしまうどころか
一瞬たりとも弛緩せず、聴く者の耳をとらえて離しません。
滅茶苦茶スリリングです。

 ショスタコーヴィチが「ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーに勝るとも劣らない天才だ!」と激賞したのも納得。

そして第2楽章では、ショパンのピアノ協奏曲第1番第2楽章の主題が引用されます。(わけわからん)

このCDは、作曲者自身のピアノ独奏によるいわば決定盤であります。


英国の主題による奇想曲(1954)は、モスクワ放送からの依頼で作曲された娯楽音楽。
イングランドやスコットランドの民謡が使われているのでしょうが、私にはよくわかりません。
クラリネットのひなびた主題で始まる8分ほどの短い曲です。
2:47からファゴットにおどけた主題が登場してテンポを速め、3:20にでる主題はミッキーマウス・マーチにそっくりです(偶然だよね・・・)。
いろんなメロディが盛り込まれ、展開も巧みで、華麗に盛り上がる楽しい曲。
ラジオで繰り返し放送されたりしたんでしょうね。

 


管弦楽のための詩曲「未成年」(1984)は、ドフトエフスキーの同名小説を原作とした映画「未成年」のための音楽をもとにした曲。
なので「20世紀映画のサウンドトラック」の香りがプンプンなのですが、この触れなば落ちんばかりの抒情的な風情はなんですか!

 もう最高です!!

ヴィオラ・ダ・モーレとピアノと管弦楽のための30分を超える大曲で、ハープシコードやリコーダーやロシアの民族楽器も登場します。
楽器選択がシブイですね、ヴィオラ・ダ・モーレですよ!
短いイントロに続き、ピアノのアルペジオに乗りヴィオラ・ダ・モーレが奏でる主題の繊細な麗しさ。
センチメンタルなメロディを慈しむように歌い上げるヴィオラ・ダ・モーレのくすんだ音色の味わい深さ。
響きの独自性と魅惑の「歌」が溶け合わされた豊かな時間が流れます。

 (おそらく初演のライブ、ピアノは作曲者自身)

 映画はこんな感じなんですね
 

クールでシニカルな知性派 ボリス・チャイコフスキー、生誕100年を期に、ちょっと聴いてみられてはいかかでしょうか。

(2025.09.13.)


関連記事
ボリス・チャイコフスキー/交響曲第2番・ハープを伴う交響曲
ボリス・チャイコフスキー/セバストポール交響曲 ほか
ボリス・チャイコフスキー/管弦楽作品集
ボリス・チャイコフスキー/ピアノ協奏曲、クラリネット協奏曲、カンタータ「黄道12宮」
ボリス・チャイコフスキー/ピアノ作品集
ボリス・チャイコフスキー/ピアノ五重奏曲 ほか


「更新履歴」へ

「音楽の感想小屋」へ

「整理戸棚 (索引)」へ

HOMEへ