ボリス・チャイコフスキー/ピアノ作品集
(オルガ・ソロヴィエヴァ:Pf)
(Albany TROY749 2005年)



Amazon.co.jp : Boris Tchaikovsky Edition, Vol. 2


没後10年のボリス・チャイコフスキー(1925〜96)、略してボリチャイ、多少注目されているのでしょうか、CDもけっこう増えてきました。
現在私のCD棚のボリチャイは10枚。 ワーグナーより武満徹より多いぞ。 いつの間にこんなに増えた?
こんな音楽ばかり聴いてると、友達減りそうで心配です。

さて、このCD、 1枚でボリチャイのピアノ独奏曲をほとんどすべて収録しています(少年期の習作を除く)
ピアノの腕前は超一流なのに、あまりピアノ曲を書いていないところ、師匠ショスタコーヴィチと共通というかそれ以上。
演奏者、オルガ・ソロヴィエヴァは、Naxosのボリチャイ「ピアノ協奏曲」でも独奏を担当。
若いけどボリス・チャイコフスキーのスペシャリストなんですね。 スキマ産業みたいですが。

「ピアノ・ソナタ第1番」(1944)は、19歳時のプロコフィエフ風作品。 第3楽章の渦巻く疾走感がジャズっぽくて素敵。

 (第3楽章は8:13から)

「ピアノ・ソナタ第2番」(1952)、これ名曲ではないでしょうか。
エネルギッシュな対位法で提示される第一主題、シンプルな第二主題、展開部で鍵盤狭しと駆け巡る音符の群れ。素晴らしい。
平穏無事な第2楽章ラルゴに続く第3楽章ヴィヴァーチェは眼が廻りそうなロンド。
次から次へと新しいメロディが登場、え? え? と思ってるうち、吹きすぎる風のように終わります。

 第1楽章
 

 第3楽章
 

「子供のための8つの小品」(1952)。 
テクニック的には簡単ですが、単純な曲の連続で大人のクラシックファンの鑑賞に堪えるのは至難の業。
ところが、ボリチャイはいとも涼しげにそれをやってのけてます。
むしろシンプルなメロディ・センスの良さが光っているほど。
ショスタコーヴィチはボリチャイを「ピョートル・チャイコフスキーに劣らない天才」と評していたそうです。
単なるお世辞だろうと思っていたのですが、そうではないのかも・・・。

後半におさめられた、「ペンタトニカ(ピアノのための6つの小品)」「ナチュラル・モード(ピアノのための7つの小品)」は、
どちらも晩年(1993)に子どものために書かれた曲集。
音はさらに簡素化していますが、内容はむしろ濃くて深いような。
古寺の枯山水のような音楽です。
テクニック的にはともかく、この世界が子どもに表現できるだろうか・・・?

最後に、単一楽章の洒落た「ソナチネ」(1946)でアルバムを閉じます。

 

ボリス・チャイコフスキー、最高に洗練された音楽世界の持ち主に思えてきました。

(06.4.22.)


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