ボリス・チャイコフスキー/ピアノ協奏曲、クラリネット協奏曲
カンタータ「黄道十二宮」

(Naxos 8.557727)



Amazon.co.jp : Boris Tchaikovsky: Piano Concerto: Clarinet Concerto; Signs of the Zodiac

Tower@jp : B.TCHAIKOVSKY:PIANO CONCERTO/CLARINET CONCERTO

この人、ぜったい変ですぜ。
変だけどスゴイ。



ボリス・チャイコフスキー
(1925〜1996)

ピョートル・チャイコフスキー
とは別人です。 
ついでに言えば、親戚でも子孫でもありません

「ピアノ協奏曲」
(1971)冒頭、ピアノに提示される主要主題は、

 「ソソソソソソソソ ソソソソソソソソ」

・・・これって「主題」といえるのかぁ?
しかし驚くなかれ、これだけで一楽章まるまる持たせてしまうどころか、
聴く者の耳を捕らえて放しません。

かつてモーリス・ラヴェルは、メロディを展開せず、
ただ繰り返すだけで曲を書こうと思い立ち、名曲「ボレロ」を作りましたが、
ボリス・チャイコフスキーは、「同音反復」だけで見事な楽章を作り上げてしまいました。
まさにマジックです。 (考えようによっては聴く人をからかっているともとれますかなぁ・・・)

 ピアノ協奏曲・第1楽章
 (このCDの演奏ではありません)

第2楽章では、ショパンのピアノ協奏曲第1番第2楽章の主題が引用されます。
どういう意味があるのかよくわかりません。 ある種のギャグまたは皮肉なのでしょうか?

「クラリネット協奏曲」(1957)は、初期の作品。 
この時期のボリチャイは、素直で素朴で叙情的な作品を書いていました。
第1楽章の、のどかで美しいこと。 第2楽章の沸き立つような音の戯れ、第3楽章の晴れがましい陽気さ。
ど真ん中のストレート的に楽しい曲です。
この人、どこでどうひねくれて、妙な曲を書くようになったのでしょう? 
面白いからいいけど。

 第1楽章
 

ソプラノとハープシコードと弦楽のためのカンタータ「黄道十二宮」(1974)は、
管弦楽による6分ほどの「プレリュード」のあとに、4人の詩人の幻想的な詩に曲をつけた4つの歌曲が続きます(各4〜6分)。
「プレリュード」で提示した素材が、続く4曲で使用されます。
繊細で神秘的で麗しくもロマンティック、変化に富んだ、素晴らしい傑作です。

 前奏曲
 

 終曲:黄道十二宮
 

ボリス・チャイコフスキー(1925〜1996)は、今年没後10年。
ナクソスのようなメジャーなレーベルからCDが出たのはメモリアル・イヤーゆえでしょうか。
これを機会に多くの方に聴いていただきたいものです。

(06.2.11.)


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