ボリス・チャイコフスキー/管弦楽作品集




Amazon.co.jp : Boris Tchaikovsky: Chamber Symphony; Sinfonietta for Strings


<曲目>
弦楽のためのシンフォニエッタ(1953)
室内交響曲(1967)
弦とオルガンのための6つのエチュード(1976)
前奏曲「鐘」(1996)

チャイコフスキーといっても、ピョートル・イリイッチではありません。
ボリス・チャイコフスキー(1925〜1996)は、20世紀ソ連(ロシア)の作曲家。
ショスタコーヴィチの弟子であり、ピョートル・チャイコフスキーとは、血縁関係はないそうです。
初期から晩年までの作品をバランスよく並べたCDです。

1曲目の「弦楽のためのシンフォニエッタ」
う、美しい! 20世紀後半に、こんなにも古典的で美しい曲を書いてよいものでしょうか。
第2楽章「ワルツ」は、ピョートル・チャイコフスキーをほうふつとさせる、浪漫&叙情の世界。
第4楽章「ロンド」は、幸せいっぱい、何の悩みもなさそーな音楽。
ショスタコーヴィチより、ずっと保守的です。 弟子が師匠より保守的な音楽を書くとは・・・

 第4楽章
 (このCDの演奏ではありません)

と思っていたら、2曲目の「室内交響曲」で、またびっくりします。
切り裂くような音響、錯綜するメロディ、うわあ、これって現代音楽じゃん。
音数は少なく、しかもブッキラボーに「ほれ」と投げ出すように、音を「置いて」いくような音楽。
クレヨンしんちゃんの声で「ききたければきけば〜」と言っているようなブッキラボーさ。
しかし決してつまらなくはなく、非常に刺激的。 なんなんですかこれは。

 第1楽章「ソナタ」
 (このCDの演奏ではありません)

「弦とオルガンのための6つのエチュード」は、静謐で瞑想的なアンダンテに始まります。
オルガンによる合いの手が、次第に緊張感を高めてゆきます。
全曲を貫く切羽詰った感じ、シュニトケやグバイドゥーリナとの共通点が感じられます。

  (このCDの演奏ではありません)

ただ、第3曲の主題は「オーケストラがーやってきたー」という懐かしいTV番組のテーマ曲にそっくりで、
思わずガクーッと力が抜けてしまいます(動画の9:35から)。 
好きだったなあ、あの番組・・・。
もちろんボリチャイがあの番組を知っていたはずはありませんが、とにかく重々しいんだか遊んでるんだかわからない、奇妙な肌触りの曲です。

最後の「鐘」は、遺作となった小品。 のほほんとして、平和。 
でもつかみどころがないというか、はぐらかされているような気がしないでもない。

・・・最初のロマンティックまっしぐら「シンフォニエッタ」を別にすれば、
「シニカルな音楽を書く人だな」という印象です。 何を考えているのか、容易にわからせません。
恐らくとてもシャイな人だったのではないかと、CD一枚聴いただけでエラソーに性格判断までするオマエは何様だと自分にツッコミをいれたりしてます。

(04.9.30.記)


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