ボリス・チャイコフスキー/交響曲第2番・ハープを伴う交響曲
(ウラディミール・フェドセーエフ指揮 モスクワ放送チャイコフスキー交響楽団)
(1977&93 録音)



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「もうひとりのチャイコフスキー」

20世紀にソ連(ロシア)で活躍した、ボリス・チャイコフスキー(1925〜96)という作曲家がいます。
ショスタコーヴィチの弟子ですが、ピョートル・イリリッチ・チャイコフスキーとは血縁関係はありません。
10年ほど前に「ボリチャイ」などと呼ばれ、ちょっとブームになりかけましたが、最近さっぱり。
6歳年上で、同じ年に亡くなったミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜96)が着々とビッグネームになりつつあるのに比べると、ちょっと寂しいですね。
ま、死んでから売れようが売れまいがご本人には関係ありませんけどね。

そのボリス・チャイコフスキー「交響曲第2番」(1967)は、堂々たる傑作であります。
異論反論認めません。

 

ヴァイオリンの鋭いピチカートで始まる冒頭は非常に印象的。
つかみはOK、聴く者の耳をとらえて離しませんが、全3楽章53分の大曲で、形式も把握しづらく、とっつきにくいところがちょっとアレですかね。

第1楽章はソナタ形式かと思ったらそうではないようで、結局よくわかりません。
第2楽章は室内楽のような静謐なラルゴ、でも単純な三部形式という感じではなく、やっぱりよくわかりません。
第3楽章はロンド形式の片鱗が感じられますが、う〜んって感じでよくわかりません。

 全然わからん曲よく紹介するな!!(安定のテキトーさ)

しかし、既存の形式に当てはめて理解しようとせず、音の流れに身を任せるような聴き方をすれば、
思いがけず透明で抒情的な瞬間が訪れたり、低音や金管のアクセントが不意打ちのように飛んできてどきりとしたり、
多彩な表情の変化、強弱の対比の妙、作曲技法の粋を尽くした数々の「仕掛け」がけっこうオモシロイのです。
この人の曲は音を突き放すというのか、つぎつぎ無造作に「ほれ」といろんな音を投げ出しては、
レゴブロックを組み立てるように音楽を作り上げていく感じで、
出来上がりがどうなるのかはご本人にも「できてみないとわからないっす〜」みたいな印象を受けます(実際はもちろん違うんでしょうが)。

第1楽章の終わり近く(17分30秒あたり)で突然、
モーツァルト「クラリネット五重奏曲」、バッハ「マタイ受難曲」、シューマン「幻想小曲集」から「夜に」などが引用されるのも謎めいていますが、
あまり深く考えず、才能あふれる作曲家による、ダイナミックでラプソディックな語り口と、さまざまな響きの手練手管を楽しむのが吉と思われます。


「ハープを伴う交響曲」は、1993年の作品。
5楽章で20分あまりの交響曲で、無駄をそぎ落としたようなシンプルでストレートな音楽です。
これは作曲者最後の管弦楽作品であり、いくつかの楽章は10代に書いたピアノ曲に基づいているそうです。
ボリス・チャイコフスキーはハープを好み、「交響曲第2番」でも重要な役割を与えましたが、
晩年に至ってついに実質的な「ハープ協奏曲」を書いたってことでしょうか。

 

どこか飄々というか、茫洋と停滞しているような音楽ですが、それでもハープには「華」があります。
ミステリアスでロマンティックでファンタジックな傑作だと思います。

(2018.06.23.)


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