浦久俊彦/悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト〜パガニーニ伝
(新潮新書 2018年)



Amazon : 悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト パガニーニ伝 (新潮新書)


ニコロ・パガニーニ(Nicolo Paganini, 1782〜1840)、それは空前絶後のヴァイオリニスト。
長身痩躯、黒いマントに身を包み、鬼神のようなテクニックでヴァイオリンを自在に操り、「悪魔に魂を売ったヴァイオリニスト」とまで言われた男。
作曲家としても天才的で、「無伴奏ヴァイオリンのための24のカプリース」や、いくつかのヴァイオリン協奏曲は現在も盛んに演奏されます。

 カプリース第5番
 

 カプリース第24番  (曲は0:47からです)
 

 ヴァイオリン協奏曲第2番・第3楽章「ラ・カンパネラ」
 

意外なことにパガニーニのきちんとした評伝はこれまで日本になかったそうで、
浦久俊彦/悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト〜パガニーニ伝 は、カバーに「本邦初の伝記」と謳ってあります。
要所を押さえた記述で謎めいた天才の生涯をコンパクトにまとめてくれています。
新書で気軽に読めるのも嬉しいところ。

バガニーニ以前と以後で、ヴァイオリン音楽はガラリと変わったとはよく言われますが、
じつはヴァイオリンに限らず、「音楽パフォーマンス」そのものを根本から変えたのがこの人であったのだそう。
黒い衣装に傍若無人な態度、孤高で無口で、悪魔と呼ばれても平然としている強烈なキャラクターをなかば意識的に作り上げ、
人間業とは思えないヴァイオリンの妙技でヨーロッパを熱狂の渦に叩き込みました。

いわば「ヴィジュアル系アーティスト」の元祖。

また、18世紀までの音楽家は王侯貴族の宮廷に仕えて「お抱え音楽家」となれば勝ち組だったのですが、
フランス革命で貴族の絶対的権威が崩れるとともに市民階級が台頭、音楽家も市民や大衆を相手に稼ぐことを考え始めます。
パガニーニはそこに見事にはまり、音楽の腕前で巨万の富を築いた最初のひとりとなりました。
会社は頼りにならないと見切りをつけ、ベンチャー事業を起こして成功したIT長者みたいですね(←違うと思う)。

大金持ちになってからの守銭奴ぶり、それでいて怪しげな儲け話に引っかかっちゃうところなど、なかなか愛すべきキャラクター。
ひとり息子への情愛、ナポレオン一族との意外な縁なども「へえ〜」って感じでした。
「悪魔キャラ」を強調しすぎたあまりに教会から疎まれ、死後どこの教会も埋葬してくれなかったのはお気の毒。
あわれパガニーニの遺体は一時的に埋葬されては堀り返されイタリア全土を放浪、1876年にやっと正式にパルマに埋葬されました(なんと死後36年!)。
デーモン小暮閣下は大丈夫だろうか・・・(余計なお世話)。

そしてのちの作曲家に与えた大きな影響。
リストもショパンもシューベルトもパガニーニを生で聴いて衝撃と影響を受け、のちの作品には「パガニーニ・ショック」が見て取れます。

読めば読むほど、パガニーニの凄さが身に染みます。
この人を無視して西洋音楽史は語れないんじゃ? と思えてくるほどです。
パガニーニの音楽、あらためて聴きなおしてみるとしましょう。

ところで私が一番好きなパガニーニの曲は、「ヴァイオリンとギターのためのソナタ 作品2の1」であります、この曲素敵。
超絶技巧とは無縁なところも良いです。

 

(2020.03.02.)


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