パガニーニ/ヴィオラとギターのための作品集
(Luigi Attademo;ギター Simone Gramaglia:ヴィオラ)




Amazon : Paganini/ Music for Viola and Guitar

<曲目>
ヴィオラとギターのための6つのソナタ 作品2(原曲はヴァイオリン)
協奏風ソナタ イ長調 作品61(原曲はヴァイオリン)
ヴィオラのためのグランド・ソナタ ハ短調



ニコロ・パガニーニ(1782〜1840)の作品で私が一番好きなのは、24のカプリースでもヴァイオリン協奏曲でもなくて、

 ヴァイオリンとギターのための6つのソナタ 作品2

だったりするんですねこれが。

え、そんな曲知らないって?

パガニーニ20代前半、華やかな音楽活動から離れ、トスカーナの古城でディダという女性と静かに愛の生活を送っていた時期に書かれた作品です。
ディダはギターの愛好家だったそうで、毎夜二人で合奏したのだとか・・・・・・うらやましすぎるっす。

全編「愛の調べ」と言っても過言ではないとろけるような幸福感と、イタリアの陽光のような「うた」にあふれた、みずみずしい音楽です(イタリア行ったことないけど)。
パガニーニと言えば超絶技巧のイメージが強いですが、じつは同時に「歌の人」でもあったのです、メロディセンス最高なのです。
もっとも歌わせるのは声ではなく、あくまでもヴァイオリンですが。

このCDは、パガニーニのヴァイオリンとギターのためのソナタを、ヴィオラで演奏したもの。
ヴィオラの陰影豊かな落ち着いた音で奏でると曲が深みを増し、むしろヴィオラのほうがふさわしく思えるほどです。

アルバム冒頭、ソナタ第1番の輝くような伸びやかなメロディの心地よさ、いかがですか?
ふくよかで色気脂気たっぷりなヴィオラの響きとあいまって、もうたまりませんのであります!

 ソナタ第1番 イ長調 第1楽章
 

ソナタ第3番のような低音で始まる曲も、ヴァイオリンよりヴィオラのほうが映えますね。

 ソナタ第3番 ニ短調 第1楽章
 

ソナタ第5番の第2楽章は、パガニーニ版「愛の喜び」と呼びたくなる底ぬけに明るい曲。
ヴィオラは技巧的にもかなり高度なものが要求されます。

 ソナタ第5番 ニ長調 第2楽章
 

どの曲もギターは伴奏にとどまっていて、プロのギタリストにとって役不足ではありましょうが、曲の美しさに免じてお許しください。

協奏風ソナタ イ長調 作品61もディダとの暮らしの中で作られた曲ですが、作品2よりもギターの役割が大きくなっています(「協奏的」というだけあって)。
曲も長くなっています。 ディダのギターの上達に合わせて書かれたのかな。

 協奏風ソナタ イ長調 第1楽章
 

ヴィオラのためのグランド・ソナタ ハ短調 は、1834年に書かれたヴィオラのためのオリジナル作品。
パガニーニは、ストラディバリ制作のヴァイオリン2挺、ヴィオラ1挺、チェロ1挺を所有しており、このセットは俗に「パガニーニ・カルテット」と呼ばれます。
パガニーニ自身チェロはともかくヴィオラはときどき弾き、目をかけていた若い作曲家・ベルリオーズにヴィオラと管弦楽のための作品を依頼もしました。
しかし出来上がった「イタリアのハロルド」という曲は期待に反して地味というか、ヴィオラが華やかに活躍する場面がほとんどなく、結局パガニーニは演奏しませんでした。
(それでもパガニーニはベルリオーズに2万フランの作曲料を支払いました、よっ太っ腹!)

それならいっちょう自分で書くかと、パガニーニは自ら「ヴィオラと管弦楽のためのグランド・ソナタ」を作曲しました。
このCDには、作曲者自らヴィオラとギターに編曲したヴァージョンが収録されています。
遠慮なく超絶技巧を披露しまくっていますが、カンタービレの優しい歌とデリケートな表現を決して忘れないところがパガニーニの素敵なところです。

 ヴィオラのためのグランド・ソナタ 第3楽章「主題と変奏」
 

パガニーニってやっぱり天才!

(2020.5.24.)


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