フェルディナント・レバイ/ギター独奏と二重奏のための作品集
(エンリコ・マリア・バルバレッシ、レオポルド・サラチーノ 2022録音)



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20世紀前半に音楽の都・ウィーンで活躍した作曲家、フェルディナント・レバイ(1880〜1953)。

 ・・・いま「誰やそれ」って言いませんでした、あなた?

確かに忘れ去られていますが、この人ギターのための曲を600曲も書きました。
ウィーン生まれ、ウィーン育ちで、ウィーン音楽院の教授をつとめましたが、
幸か不幸かマーラーやシェーンベルクとは縁がなかったようで、作風は近現代的なところはなく、ほぼ前期ロマン派。
知らずに聴いたらシューベルトかパガニーニかと思います。
とてもじゃないけど20世紀に書かれた曲とは・・・。

このアルバムは、レバイのギター独奏または二重奏のための曲を収めたもの。
ギター・ソナタが1曲入ってますが、じつはレバイはギター・ソナタを全部で7曲書いているそうです。

 ギター・ソナタ第1番 ホ長調 第1楽章 (1943)
 

いかにもウィーン風な3拍子の優美なソナタ形式でありますと、ウィーン行ったことのない私が断言します。

二つのギターのための「小パッサカリア」は傑作だと思います。
バロック風に始まりますが、テンポは自在に揺らぎ、ロマンティックに終わります。

 二つのギターのための「小パッサカリア」(1940) (本CDの演奏者による)
 

ギター独奏のための「きらきら星変奏曲」もあります。
モーツァルトの向こうを張るその意気やよしですが、レバイの音楽はひたすら優しく、刺激成分ゼロ。
十二音技法やトーンクラスターを使えとは言いませんが、もうちょっとアブナイ感じや泥臭いところや、はっちゃけたノリがあれば、
これほど完全に忘れ去られることはなかったんじゃないでしょうか。

 ギター独奏のための「きらきら星変奏曲」(1950)
 

しかしまあ、こういう平穏無事で人畜無害な感じ、悪くはないです(←言い方)。
レバイ自身は、妻がユダヤ系だったことで1938年に教職を追われます。
1946年に復帰できたものの、戦後の混乱もあり困窮のうちに世を去ったそうです。

 二つのギターのための「セレナード」第4楽章(1949) (1:36からのコラール変奏曲が美しい)
 

レバイの作品は最近ぼちぼち取り上げられますが、なにしろ地味ですからねえ・・・
これからも「知る人ぞ知る」レベルにとどまりそうです。
といいながらレバイのCD見つけたら即購入してしまう妙なヤツがこの私です。

(2024.08.12.)


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