新倉瞳/11月の夜想曲(2021)



Amazon : 11月の夜想曲

Tower : 11月の夜想曲

ファジル・サイ: 11月の夜想曲 ~ チェロと管弦楽のための
第1楽章 終わりのない夜の夜想曲
第2楽章 孤独な夜想曲
第3楽章 夜歩きの夜想曲
第4楽章 心象の夜想曲
第5楽章 青い夜想曲

藤倉 大: スパークラー ~ チェロのための

挾間美帆: 組曲「イントゥー・ジ・アイズ」
第1曲 サンフランシスコ
第2曲 デュッセルドルフ
第3曲 チューリッヒ
第4曲 東京

佐藤芳明: 2つの楽器のための2つのカノン
第1曲 寛容
第2曲 琢磨

和田 薫: 巫 ~ チェロと和太鼓のための

ニーグン(伝承曲)


クラシック演奏家のアルバムが全部新曲なんて凄いと思いませんかそこのあなた!


チェリスト・新倉瞳の新作は、なんとすべてが委嘱新作という意欲的なアルバム。

 11月の夜想曲

クラシックの演奏家のアルバムが全部新曲なんて凄い、カッコイイ!
応援せずにはいられません。

ファジル・サイ「11月の夜想曲」は5楽章からなるチェロ協奏曲。
11月のイスタンブールの夜を音楽で表現した作品とのことで、ミステリアスな開始、チェロの歌と超絶技巧、管弦楽の煌めきと咆哮。
トルコというか中近東っぽいフレーバーがふんだんに盛り込まれ、異国情緒たっぷりです。
チェロのロマンティックなメロディで始まる第3楽章がとくに印象的。

 第3楽章 夜歩きの夜想曲
 

なおファイジル・サイはトルコのコンポーザー/ピアニストで、世界的に活躍している偉い偉い音楽家です。


ロンドン在住で、これまた世界的に注目されている若手作曲家・藤倉大「スパークラー」は無伴奏チェロのための作品。
アルバム中もっとも前衛的で難解で超絶技巧が大炸裂、チェロ1台というのが信じられないほど豊かで多彩で不思議で面白い。
これ多重録音じゃないですよね・・・ってライブ映像があるから間違いない。

 


狭間美帆はアメリカを中心に活躍するジャズ作曲家・指揮者・演奏家で、グラミー賞にノミネートされたこともある人。
「イントゥー・ジ・アイズ」はチェロとマリンバのための組曲で、「アイズ」は新倉瞳の「瞳」に掛けているそうです。
マリンバは第一人者の塚越慎子、珍しい組み合わせですが相性バッチリです。
サンフランシスコ、デュッセツドルフ、チューリヒ、東京の4曲からなり、すべて新倉瞳がこれまでに暮らした街。 世界を渡り歩いてますね。
ところで私がこれまで暮らしたのは、岡山と香川と徳島だけ、なんか瀬戸内海近辺をうろちょろしてます(魚か)・・・って関係ない。
4曲とも都会的センス溢れるJAZZYな曲で田舎者にはまぶしい限りですが、とくに第2曲「デュッセルドルフ」は華やかで活発、キラキラと瑞々しく輝く音に魅了されます。

 第2曲「デュッセルドルフ」
 


佐藤芳明は新倉瞳とよく共演しているアコーディオン奏者、ふたりで「魂柱と鞴」というアルバムを出していて私もライブを聴きに行きました。
「2つの楽器のための2つのカノン」はもちろんチェロとアコーディオンのための作品。
第1曲「寛容」は落ち着いた曲。
第2曲「琢磨」は活発で、ノリノリ丁々発止がスリリングな曲、前衛的なところはなくポップ(というかロック)です。

 第2曲「琢磨」
 

和田薫「巫〜チェロと和太鼓のための」
アニメ「犬夜叉」の音楽を担当した人です。
和太鼓(大御所・林英哲!)とチェロが果たして合うのか・・・? 合うのです!
曲全体に「和」が立ち込め、「チェロって和楽器だったっけ?」と思ってしまうほど。
重厚でありながらどこか茫洋とした和太鼓と、切々とした情感をのせたチェロ、両者の掛け合いは濃厚でワイルドでタフでダイナミック。
矢代秋雄「チェロ協奏曲」をちょっと思い出しました。

 

そしてアンコール的に収められたクレズマーの伝承歌「ニーグン」では、なんと新倉瞳のボーカルが聴けるうえ、
塚越慎子(マリンバ)、佐藤芳明(アコーディオン)、林英哲(和太鼓)が総出演。
フリーセッションということで、ヴィヴィッドかつパッショネートかつカオスな音世界が渦を巻き、最後はチェロのしっとりした歌でアルバムを閉じます。

 

ジャケットは落ち着いた雰囲気ですが中身は刺激的で挑戦的、超「攻めた」アルバムです。
新倉瞳、たおやかなルックスからは予想できないほど一途で頑固でアグレッシブなお方と想像します。
イージーリスニング路線や、古典名曲一辺倒ではなく、ひたすらに「自分の音楽」を追いかけるその姿に強い意志と品格を感じます。

(2021.12.25.)


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