新倉瞳&佐藤芳明/魂柱と鞴(こんちゅうとふいご)
(2019)



Amazon : 魂柱と鞴(こんちゅうとふいご)

Tower : 魂柱と鞴



2019年11月9日は、チェリスト新倉瞳とアコーディオン奏者佐藤芳明のデュオ・ライブに行きました(@岡山)。

場所は後楽園近くのカフェ。
入ってすぐにこのCD「魂柱と鞴」(こんちゅうとふいご)を並べたテーブルがあり、苦み走った彫りの深いフェイスのイケメン兄ちゃんが座ってました。
ちょっと怖そうでしたが、CD買うと愛想よく「ありがとうございました」と言ってくれました。
「スタッフの人かな〜」と思ってたら、ライブが始まると、その兄ちゃんがアコーディオンを抱えてステージに上がってきました。

 「あ、このひとが佐藤芳明だったの!」

新倉瞳はシックなドレスで軽やかに登場、生で聴くのは初めてですが、可憐な容姿からは想像できないパワフルでキレキレのパフォーマンス。
チェロとアコーディオンのデュオは初めてですが意外に合います、溶け合います、音と響きのマリアージュ。
音色も意外に似ていまして、「これはチェロの音? アコーディオンの音?」とわからなくなることもしばしば。
ふたりの息もぴったりで、楽しいライブでした。

 2018年 横浜での野外ライブ
 

こういうノリノリなナンバーもあるかと思えば、静謐な祈りを感じさせる曲もありました。

 ピアソラ/TANTI ANNI PRIMA
 

このライブはアルバム「魂柱と鞴」(こんちゅうとふいご)の発売を記念したツアーの一環。
魂柱とは弦楽器の表板と裏板の間に立つ柱。

 

魂柱のおかげで振動が裏板まで伝わり楽器全体に音が響きます。
魂柱は接着剤でくっついているのではなく二枚の板の間に挟まれているだけなので、
弦交換のときに弦を外してしまうと表板に対する圧力が無くなり、魂柱が外れてしまうことがあります(私は幸い経験なし)。
そうなると楽器屋さんに魂柱を立て直してもらわなくてはならなくなります。
魂柱の位置によって音は変わるので楽器屋さんも腕の見せ所、微妙に調整し魂の柱を立てるべき最適な場所を探します。

(ふいご)は要するにアコーディオンのジャバラのことですかね(アコーディオンのことはよくわかりません・・・)。

このアルバム、選曲はクラシック・ポピュラ−・トラディショナルごちゃ混ぜで、良い意味でのカオス。
ヴィヴァルディのソナタやバッハのコラールがあるかと思えば、クレズマー(ユダヤの民族音楽)、ピアソラのリベルタンゴ、映画「ハウルの動く城」の「人生のメリーゴーランド」も入ってます。
全体から漂う「好きなこと好きなようにやって楽しいでーす」感が、とっても気持ちいいです。

じっさい、アコーディオンとチェロのデュオなんて、そうそう聴けるもんじゃありませんからね。
チェロがお好きな方、アコーディオンがお好きな方、そして一風変わった楽器の組み合わせに興味のあるアナタにおススメのアルバムです。

 リベルタンゴ
 

 人生のメリーゴーランド
 

なお映画「ハウルの動く城」のサントラでアコーディオンを担当したのは他でもない佐藤芳明だそうです。

ライブでの演奏はCD以上にアドリブ効かせて本当に素晴らしかったのですが、特筆すべきはMCもとっても面白かったこと。
新倉瞳嬢がオモロイ人というか捨て身で笑いを取りに行く性癖の持ち主であることは、ブログを読んでなんとなくわかってましたが、いやあ期待以上でした。

 新倉瞳ブログ「瞳の小部屋」 2019年11月5日の記事

ライブ中のMCは主に新倉瞳嬢がリードしつつ、お笑い芸人のような素敵なボケを炸裂させます。
ツッコミ役の佐藤芳明氏とのかみ合っていないようで妙にかみ合ってるようでちょっとグダグダな言葉のキャッチボールは、演奏に劣らずスリリングで楽しゅうございました。

(2019.11.13.)


その他の「新倉瞳」の記事
新倉瞳/祈り 〜 チェロとハープのための珠玉の名曲集
新倉瞳/11月の夜想曲

バッハ/ゴルトベルク変奏曲(原田陽、佐藤芳明、新倉瞳)



「音楽の感想小屋」へ

「更新履歴」へ

「整理戸棚 (索引)」へ

HOMEへ