佐藤正午/きみは誤解している
(岩波書店・単行本)




Amazon.co.jp : きみは誤解している (小学館文庫)

以前、「ジャンプ」という小説でたいへん楽しませてもらった、
佐藤正午さんの短編集です(2000年出版)。
洒落たタイトル、美しい装丁から、てっきり恋愛小説集かと思ったら
なんと、「ギャンブル小説集」、それも「競輪小説」だったので、かなり驚きました。
競輪に様々な形でのめり込んでゆく人々を描いた作品が並んでいます
(それぞれの作品に関連はありません)。

さて、私、じつはギャンブルはやりません。
競輪も競馬も競艇もマージャンもパチンコもやりません。
にもかかわらず、この本がとても面白く読めたのは自分でも少々意外ですが
佐藤正午さんの語り口が巧み(競輪を描いてもなんとなくお洒落です)なことはもちろん、
清々しいまでに突き抜けた人物が数多く登場することと、
気の利いた警句があちこちにちりばめられているおかげでしょう。

例えば、
 「それがギャンブルの世界のルールだ。(中略)ここで起こったことの全部を自分で背負わなきゃならない、
 決めるのは自分で結果をつかむのも自分だ。なあお嬢さん、決めるのはあんたなんだ、
 度胸よく一点張りするのも、こすからく保険をかけるのもあんた次第なんだよ、
 誰かに頼りたいならこんなとこには来ないことだ」
(75ページ)

 「おれに言わせりゃギャンブルの手を借りなくても人生なんてもともと狂ってる。
 おれはそう思う。気をつけたほうがいい。いつ何が起こるかわからない。
 ギャンブルに手を出そうと出すまいと、おれもあんたも狂った人生の真っ只中にいるんだ
」(174ページ)

・・・なかなかハードボイルドですね。
佐藤正午さんは、エッセイ集「象を洗う」を読むと、けっこうギャンブル好きのように思われます。
しかしそのギャンブルの世界を描いてこれだけ面白い小説が書けるということは、
どこかでギャンブルをやってる自分や周囲を冷静に観察しているんでしょうね。
作家の先生というのは、えらいなあ〜、と、素直に感心までしてしまいました。

あと、この本が岩波から出版されているのが、なんとなく面白いです。
その経緯については、作者自身による「付録」にくわしく述べられています。

(02.4.9.記)

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