以前この記事でお話しした、いわゆるひとつの「発表会」が終わりました。
小さなカフェを借り切っての内輪の会。
とはいえ個人レッスンの私に友人知人はおりません。
家族にも「来なくていいよ」と言っておいたし・・・。
「死してしかばね拾うものなし」
「大江戸捜査網」のナレーションが脳裏をよぎります。
曲は、バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番から「メヌエット」
ええい、たゆまぬ努力で身につけてきた、傍若無人、傲岸不遜なおっさんパワーで乗り切るぜ!
とはいえ皆さん上手だ・・・。
私など出演が許されるレベルではないぞ・・・。
でもいまから「やっぱり止めます」と言うわけにもいかないしなあ・・・。
などと頭の中でぐるぐるしているうちに、
「はっ! 出番だ!!」
・・・なんとか無我夢中のうちに終わりました。
あちこち間違えた気もするけどよく憶えていません。
ただ、最初は歩くほどの速さで弾き始めたのが、だんだん小走りになり、
最後は「だれか止めて〜!」と心の中で叫びながら全力疾走で駆け抜けた記憶が。
まあそれもご愛敬でしょう(←そうか?)。
あたたかい拍手までいただき、生きててよかったと思いました(←大げさ)。
さて、このところ創元推理文庫から
アントニイ・バークリー「ジャンピング・ジェニイ」、パーシヴァル・ワイルド「検死審問」など、
往年の名作ミステリがいろいろ復刊され、嬉しい限りです。
昔のミステリはレトロで上品な味わい、
無駄に長くないし、ストーリーやプロットもストレートで、読みやすい気がします。
ヘレン・マクロイ(1904〜1993)も、創元が力を入れている往年の巨匠のひとり。
これまで「家蝿とカナリア」 「幽霊の2/3」 「殺す者と殺される者」」などが刊行されていますが、
このたび最高傑作の呼び声高い「暗い鏡の中に」(1950)が新訳で発売されました。
この作品のテーマはドッペルゲンガー伝説です。
品のあるストーリー運びと、全編にたちこめる薄暗い霧のような謎の香り。
これぞクラシック・ミステリ!
幻想と怪奇と論理性の見事なブレンドを堪能し、
超自然の謎と不可能性に最後まで翻弄されました。
そして、深く静かな余韻を残したラスト。
ディクソン・カーの「火刑法廷」を連想させます。
実際、かの大傑作に勝るとも劣らないのではないでしょうか。
ところでドッペルゲンガーって、考えようによっては便利かも。
ひとつ欲しいような気がする(ひとつって・・・)。
つまらない会議に、代わりに出てもらいたいのですが・・・ダメ?(←会ったら死ぬんだぞ!)
(11.7.3.)