ヘレン・マクロイ/暗い鏡の中に(1950)
(創元推理文庫 2011年)



Amazon.co.jp : 暗い鏡の中に (創元推理文庫)

<ストーリー>
ブレアトン女子学院に勤めはじめて五週間目、
女性教師フォスティーナは、突然理由も告げられず解雇される。
義憤にかられた同僚教師ギゼラと、その恋人ウィリング博士の調査で
明らかになった解雇理由は、実に奇妙なものだった・・・。


以前この記事でお話しした、いわゆるひとつの「発表会」が終わりました。

小さなカフェを借り切っての内輪の会。
とはいえ個人レッスンの私に友人知人はおりません。
家族にも「来なくていいよ」と言っておいたし・・・。

 「死してしかばね拾うものなし」

「大江戸捜査網」のナレーションが脳裏をよぎります。

曲は、バッハ/無伴奏チェロ組曲第1番から「メヌエット」
ええい、たゆまぬ努力で身につけてきた、傍若無人、傲岸不遜なおっさんパワーで乗り切るぜ!

とはいえ皆さん上手だ・・・。
私など出演が許されるレベルではないぞ・・・。
でもいまから「やっぱり止めます」と言うわけにもいかないしなあ・・・。

 などと頭の中でぐるぐるしているうちに、

 「はっ! 出番だ!!」

・・・なんとか無我夢中のうちに終わりました。
あちこち間違えた気もするけどよく憶えていません。

ただ、最初は歩くほどの速さで弾き始めたのが、だんだん小走りになり、
最後は「だれか止めて〜!」と心の中で叫びながら全力疾走で駆け抜けた記憶が。
まあそれもご愛敬でしょう(←そうか?)

あたたかい拍手までいただき、生きててよかったと思いました(←大げさ)


さて、このところ創元推理文庫から
アントニイ・バークリー「ジャンピング・ジェニイ」パーシヴァル・ワイルド「検死審問」など、
往年の名作ミステリがいろいろ復刊され、嬉しい限りです。
昔のミステリはレトロで上品な味わい、
無駄に長くないし、ストーリーやプロットもストレートで、読みやすい気がします。

ヘレン・マクロイ(1904〜1993)も、創元が力を入れている往年の巨匠のひとり。
これまで「家蝿とカナリア」 「幽霊の2/3」 「殺す者と殺される者」」などが刊行されていますが、
このたび最高傑作の呼び声高い「暗い鏡の中に」(1950)が新訳で発売されました。

この作品のテーマはドッペルゲンガー伝説です。
品のあるストーリー運びと、全編にたちこめる薄暗い霧のような謎の香り。
これぞクラシック・ミステリ!

幻想と怪奇と論理性の見事なブレンドを堪能し、
超自然の謎と不可能性に最後まで翻弄されました。

 そして、深く静かな余韻を残したラスト。

ディクソン・カー「火刑法廷」を連想させます。
実際、かの大傑作に勝るとも劣らないのではないでしょうか。

ところでドッペルゲンガーって、考えようによっては便利かも。
ひとつ欲しいような気がする(ひとつって・・・)
つまらない会議に、代わりに出てもらいたいのですが・・・ダメ?(←会ったら死ぬんだぞ!)

(11.7.3.)


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