グラナドス/ピアノ作品集・第4集(NAXOS 8.554629)
(ダグラス・リヴァ:ピアノ)




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聴く人の魂の奥深く入り込んで、大きな痕跡を残す音楽、というのがあります。
バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームスなどのいくつかの作品、
マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンなどのいくつかのアルバム、
ビートルズ、クイーンなどのいくつかのナンバー、等々・・・。
それらは時代を超えて生き残り、「名曲」「名盤」と呼ばれてゆくわけですが、
しかし音楽聴くたびに魂をふるわせられたり、心ゆさぶられたりしてたら疲れて仕方がないわい、というのもまた本音。
だいたい、たかが音のつながりのくせして、聴く人の精神を大きく揺り動かすなんざ、実に生意気でございます。
こういう音楽には間違いなく何らかの「魔物」が棲みついております。

さて、エンリケ・グラナドス(1867〜1916)は、スペインの作曲家。
美しく耳ざわりの良いピアノ曲を数多く作曲し、例によって「スペインのショパン」と呼ばれることがありますが、
ショパンの音楽にしばしば「魔物」が棲んでいるのに対し、グラナドスのにはおそらく「妖精」が棲んでいます。
どこまでも明るく、ときに能天気ですらあるのですが、その天真爛漫さに心が癒されます。
聴く人の存在意義を問うてきたりはしませんし、「人間なんてちっぽけな生き物だよ」とうそぶいたりもしません。
ただ無心に遊び戯れる音たち。

1916年3月、演奏旅行を終えたグラナドスは、妻とともにリバプールから客船で帰国の途につきました。
しかし時は第一次世界大戦中、船は英仏海峡でドイツのUボートの攻撃を受け沈没します。
グラナドスは一度は救命ボートに助け上げられたのですが、妻がボートにたどり着けず溺れそうになっているのを見ると、
再び海中に飛び込み、そのまま二人とも溺死してしまったそうです。

ナクソス・レーベルの「グラナドス・ピアノ作品全集(全10集)」は、どれも素晴らしいです。
強いてお気に入りをあげれば「詩的なワルツ」が収録された第4集でしょうか。

 「詩的なワルツ」より「メロディック・ワルツ」 (どことなく懐かしいメロディ・・・)
 

 「詩的なワルツ」より「ブリリアント・ワルツ」 (優雅と洗練の極み)
 

なお彼のピアノ曲の最高傑作といわれるのは組曲「ゴイエスカス(Goyescas)」(第2集に収録)。
美しくたおやかな響きですが、この曲にだけはどうやら「魔」が潜んでいそうです。 聴くときは心の準備を。

 「ゴイエスカスGoyescas」第1曲「愛のことば Los Requiebros」
 

(05.11.6.)


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