グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲



アンネ・ゾフィー・ムター盤
Amazon.co.jp : Glazunov, Prokofiev/Violin Concerto

Tower@jp : Glazunov :Prokofiev:Violin Concerto/Mutter(vn)


先日、バーボン(Maker's Mark)のコントレックス割り(←意外といける)を飲みながらふと思いました。

 クラシックの作曲家で、一番酒飲みなのは誰だろうヒック?

たとえばモデスト・ムソルグスキー(1839〜1881)。
「展覧会の絵」で有名な彼は20代から立派なアル中でした。
精神症状が出て入院していたムソルグスキーに、何を思ったのか友人がブランデーの大瓶を差し入れ。
翌日、空瓶とともに床の上で冷たくなっているのを発見されました。42歳。 
ひとりで一気飲みでもやらかしたのでしょうか。 

あるいはマックス・レーガー(1873〜1916)
巨漢でヘビー・スモーカーで大酒のみ、レストランで「食べるのに2時間くらいかかるビーフステーキを頼む」と注文したことがあるそうです。
1Kgは必要でしょう・・・。 めちゃくちゃ酒に強かったそうですが心筋梗塞で死去。 享年43歳。

みな酒飲みというより、酒で身体を壊した作曲家ですがな。。。

意外な伏兵がアレクサンダー・グラズノフ(1865〜1936)。
ペテログラード音楽院学長を長くつとめ、ショスタコーヴィチの恩師でもありました。
「ショスタコーヴィチの証言」(中公文庫)によると、講義中も机の陰にかくれて飲んでいたそうで、これはもう立派なアル中 (「証言」の内容は信用できないとも言われますが・・・)。
しかし、音楽的能力と記憶力はもの凄く、タネーエフという作曲家が新作の交響曲をピアノで弾いて聴かせたところ、
グラズノフは黙って聴いた後、全曲をそのままリプレイして見せたそうです。これはちょっと嫌味ですね。
さて、そんなグラズノフ、身体は頑丈だったのでしょう、大酒を飲みながらも71歳まで生きました。

というわけで、作曲界のベスト・ドランカー(?)はグラズノフ先生ではないかと思うのですが・・・いかがでしょうか??


さて、アレクサンダー・グラズノフの作品で一番好きなのがヴァイオリン協奏曲 作品82 (相変わらず長い前ふりです)。
1904年の作ですが、20世紀に書かれたとは思えないものがあります。
ひたすら甘くて、ロマンティックで、センチメンタルで、哀愁で、軟弱で。。。。

 もう最高です、この曲。

ロマン派のヴァイオリン協奏曲が好きだけど、メンチャイ・ブルッフは聴き飽きたとおっしゃる向きは是非。
約20分のこじんまりとした協奏曲ですが、チャイコフスキーにも負けない・・・いやちょっとは負けてるか、でもとにかく名曲だと思います。

 グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリニスト美人!)
 

酔いながら作曲したのか、かなり自由に書かれていて形式を把握しづらく、CDによってトラックの切り方もまちまちです。
私は、自由なソナタ形式の第1部 → カデンツァ → 自由なロンド形式の第2部 と理解しております。
以下、私流、曲の解説(タイミングは上の動画によります)。

第1部曲頭、独奏ヴァイオリンの低音で提示される第1主題、「ロシアの憂愁」という感じで大変よろしいです(モデラート)。
2:59あたりから、しっとりと歌われる第2主題、たよやかな「ロシアの美女」ですな。
5分たらずで提示部は終わり、展開部へ。 
展開部は5:25から新しい主題が独奏により提示されて始まります(アンダンテ)。
幅広く朗々とした「ロシアの日の出」ってイメージのこの新主題、ひたすらじっくりと歌われ、展開されます。
ハープとの絡みがゴージャスかつ優美なこの部分、展開部というよりは中間部と呼んだほうがふさわしいのかもしれません。
9:00から第1&2主題の展開がはじまり、ちょっと展開部らしくなります。
10:40、クライマックスからそのままなだれ込むように独奏ヴァイオリンが重音のフォルテシモで第1主題を再現、再現部となります。
11:58から第2主題がほぼ完全な形で再現、そのまま流れるように13:00ごろから技巧的なカデンツァとなります。
カデンツァは呈示部の二つの主題を巧みに組み合わせて作られています。

カデンツァが終わり、16:03 トランペットにファンファーレ風のロンド主題が現れるところから第2部
このロンド主題、一度聴いたら忘れられないほどチャーミングでしかも能天気、「ロシアの陽気な酔っ払い」と名付けたい。
優雅なワルツ風エピソード、素朴な民謡風エピソードを交えながら、ロンド主題もさまざまに変奏されます。
独奏ヴァイオリンは次から次へと超絶技巧を駆使、さながら技巧の品評会、ハープやグロッケンシュピーゲルも曲を華やかに盛り上げ、最後は明るく曲を閉じます。

さて、数えてみるとこの曲のCD、8種類ほど持っておりますが、よく聴くのは、

 @優雅でしとやか、ちょっと崩した弾き方がとても色っぽいシルクの肌触りアンネ・ゾフィー・ムター盤
 A隅々まで完璧に磨き上げたメタリック塗装のようで歌心も忘れていないマキシム・ヴェンゲーロフ盤
 Bこのロマンティックな曲をここまでクール&ブッキラボーに弾くとはある意味凄い、もちろん技巧は完璧ヤッシャ・ハイフェッツ盤

の3種類。 どれも素晴らしいです。

ちなみに私は最近めっきり酒が弱くなりました(←関係ない)。

(07.6.10.)


P.S.日本が誇る若手のホープ、木嶋真優のライブ動画がアップされました。名演です! (ただしオケはちょっと残念)

 

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グラズノフ/弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテ 他(サンクトペテルブルグ弦楽四重奏団)


マキシム・ヴェンゲーロフ盤
Amazon.co.jp : Glazunov, Prokofiev/Violin Concerto

Tower@jp : Prokofiev:Glazunov:Violin Concerto: Vengerov(vn)



ヤッシャ・ハイフェッツ盤
Amazon.co.jp : Glazunov Violin Concerto

HMV : Glazunov Violin Concerto icon

Tower@jp : Sibelius/Prokofiev/Glazunov:Violin Concerto:Heifetz(vn)

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