ジェミニアーニ/コレルリのヴァイオリンソナタによる合奏協奏曲
(イ・ムジチ)



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イタリアの音楽家 フランチェスコ・ジェミニアーニ(1687〜1762)はアルカンジェロ・コレルリ(1653〜1713)の弟子。
師匠が亡くなった翌年イギリスに渡り、ヴァイオリンの名手&作曲家として活躍します。
当時イギリスは経済力の拡大と市民階級の台頭により、ヨーロッパ有数の音楽の消費地となっていました(ただし生産地ではない)。
なぜかイギリス生まれの大作曲家はいないのに国民は音楽が大好きで、大陸から入ってきた曲を喜んで弾き、聴きました。
音楽家たちもビジネス・チャンスを掴もうと大陸からドーバーを越えました(いわゆる「外タレ」)。
最も成功したのはヘンデルとハイドンですが、ジェミニアーニもそれなりに成功したひとりです。

イギリスではコレルリの作品が非常に好まれていました。
とくに最後に「ラ・フォリア」を持つヴァイオリン・ソナタ集作品5(1700)は、唯一のソロ・ソナタ集ということもあり、
あまたのヴァイオリン愛好家が楽譜を買い求め、愛器をギコギコいわせては家族に迷惑がられていたはずです(←言い方)。
そこでジェミニアーニは考えました。

 「師匠のソナタを協奏曲に編曲してコンサートで演ったら、絶対ウケるぞ!」

目論見は当たり、1735年に発表した協奏曲は大好評を博しました。
たとえて言えばファミコンのゲーム音楽を交響組曲にしたようなもの、知ってるメロディが豪華なアレンジで演奏されたら嬉しいです。
もちろん原曲を知らなくても大丈夫、小粋な娯楽音楽として楽しめます。

 ソナタ第7番 第1楽章 (原曲)
 

 協奏曲第7番 第1楽章
 

この曲を知り尽くしていたであろうコレルリの弟子ジェミニアーニは、痒い所に手が届く絶妙のアレンジで気持ちよく聴かせてくれます。
大きめの楽器編成で様々な響きを鳴らして遊びつつ、サラサラとよどみなく流れてゆきます。
コレルリはとっくに亡くなっていたし、当時は著作権の概念もなかったし、さぞかし美味しい仕事だったことでしょう(←言い方)。

 ソナタ第10番 第2楽章 (原曲)
 

 協奏曲第10番 第2楽章
 

もっとも有名な「ラ・フォリア」は、素晴らしい原曲にジェミニアーニの華麗なアレンジが見事にはまっています。
終結部分の重厚な盛り上がりは、ソロ・ソナタではできないことです。

 ソナタ第12番「ラ・フォリア」 (原曲)
 

 協奏曲第12番「ラ・フォリア」
 

古楽器を用いた録音も複数ありますが、ここはあえてふくよかでロマンティックな響きのイ・ムジチを。
一種のイージーリスニングですから、「作曲された時代の響きを忠実に再現するのじゃ!」なんてムツカシイことは考えなくてもいいと思うんですよね。

(2022.12.23.)

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