シッダールタ・ムカジー/病の皇帝「がん」に挑む
(田中文・訳 早川書房 2013年)

Amazon : 病の皇帝「がん」に挑む 上 Amazon : 病の皇帝「がん」に挑む 下
楽天:病の皇帝「がん」に挑む(上) 楽天:病の皇帝「がん」に挑む(下)


科学ノンフィクションの新たなる傑作!


今年の仕事も(だいたい)終了。
昨日でめでたく仕事納めを迎えました。
このまま平穏な新年を迎えたいものです。

というわけで今日は開放感大爆発! プールで思わず、1500mノンストップで泳いでしまいました。
いかんいかん、無理すると明日がしんどいよ、もう年なんだから。
でも、思ったほど疲れません。
仕事納めの開放感が勝っているのでしょうか。
まあ、明日も休みだから別にいいや。
明日も泳ぎにいこうかな・・・・(←大丈夫か?)。

ニョウボに「年寄りの冷や水」と言われて、
「いや、温水プールですから」と、定番の寒いボケで返すオッサンがここにいますよ。

メタボが怖いので、最近は意識して体を動かすようにしています。
肥満は、脳卒中や心筋梗塞だけでなく、ガンのリスクファクターでもあるそうですね。
それなら食事と酒の量を減らしたら、と家族には言われますが、
あっはっはー、それができれば苦労しません。

さて、ワタクシこう見えても(見えないって)科学ノンフィクション大好きオッサン。
サイモン・シン「フェルマーの最終定理」、 マーカス・デュ・ソートイ「素数の音楽」、 マンジット・クマール「量子革命」 ブライアン・グリーン「宇宙を織りなすもの」
などを読んでは、自分が賢くなった錯覚に陥り悦に入っております。
本書 シッダールタ・ムカジー/病の皇帝「がん」に挑む は、科学ノンフィクションの新たなる傑作!

気鋭の腫瘍内科医が、4000年に及ぶ「がん」と人間の苦闘を描きます。
医学的に高度で専門的な内容を盛り込みながら、人間的・社会的な側面からもしっかり光を当てています。
びっくりするほど読みやすく、まるで大河小説のようです。
良質な科学ノンフィクションに必須の「難しいことをやさしく書きながらレベルを落とさない」ことに、見事に成功しています。

著者によると本書は、自分が受け持った患者から受けた質問への、とても長い回答。
ガンの再発のあとで、「このまま治療を受けるつもりだけど、私が闘っている相手の正体を知らなくちゃならない」
と言ったある女性患者への答えとして書き始めたそうです。

幾多の医師・研究者、そして患者が病の皇帝「がん」に戦いを挑み、ある者は敗れ去り、ある者はささやかな勝利を得ます。
私自身がいずれその戦いに加わる可能性は30%、ことによると40%、しかもその日は明日かもしれない、となるとまったく人ごとではありません。
「がん細胞」は病気であると同時に私たちそのもの、「われわれ自身のゆがんだバージョン」であることを思えば、
この戦いに終わりが訪れることはないのでしょうか。

「がん」に興味がある人のみではなく、将来「がん」にかかるかもしれない人なら(われわれ全員だ!)
目を通しておいて損はない本だと思いました。

なお本書はピューリッツァー賞を受賞しています。

(2013.12.28.)

病気とは人生の夜の側面で、迷惑なものではあるけれども、市民たるものの義務の一つである。
この世に生まれた者は健康な人々の王国と病める人々の王国と、その両方の住民となる。
人は誰しもよい方のパスポートだけを使いたいと願うが、早晩、少なくともある期間は、
好ましからざる王国の住民として登録せざるを得なくなるものである。
by スーザン・ソンタグ
(本書のエピグラフより)


「本の感想小屋」へ

「整理戸棚」へ

「更新履歴」へ

HOMEへ