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宇宙を織りなすもの(上) |
宇宙を織りなすもの(下) |
ガラッ八:親分こんちわ〜。 おおっ、ど、どうしたんですかい、えらくムツカシイ顔しちゃって。
親分:八よ・・。 おまえは「何もないからっぽの真空空間」は、実体のあるモノだと思うか?
八:「からっぽの真空空間」って・・・。 なにもないんだったら、なにもないんでしょうよ。
親:しかしな、「重力によって空間は歪む」んだそうだ。
八:いわゆる「空間のゆがみ」ってやつですね、聞いたことありやす。
親:「なにもないモノ」が「ゆがむ」ってのはどういうことだ? やっぱり真空空間は実体のあるモノじゃないのか?
八:ああもう、ややこしいな〜、空間以前に親分の頭の中がゆがんでるんじゃありませんか。
親:言いやがったな。 おまえも少しは頭をひねるなりゆがめるなりして、脳のシワを増やしたほうがいいぜ。
八:余計なお世話でやんす。
さては親分また妙な本に感化されてますね。
「宇宙人はすでに地球に来ている」とか「20××年に宇宙は滅亡する」とか、勘弁でやんすよ〜。
親:そんな妙な本と違うわい!
今年最大の脳みそシワ増やし本、ブライアン・グリーンの「宇宙を織りなすもの」を読んだんだっ!
八:SF小説みたいなタイトルですね。
親:著者のグリーンは理論物理学者。
前作「エレガントな宇宙」(1999)では、専門分野である「ひも理論」を
数式を使わずにエレガントに紹介して・・・
八:よくわかったんですかい?
親:いや俺は途中で挫折した。
八:あちゃあ〜。
親:でも、新作「宇宙を織りなすもの」は全部読めたぞ!
「エレガントな宇宙」の内容もしっかり織り込みながら、
理論物理学の最大にして最前線のテーマを熱く語っている。
八:なんですかその最前線のテーマっていうのは。
親:ひとつは、「物質の根源は何か」ということだ。
八:そりゃ原子でしょ。
親:いや、原子は電子と原子核に分けられる。 原子核は陽子と中性子からできている。
そして、陽子と中性子は、「クォーク」という素粒子が集まってできているんだなこれが。
八:するってえと物質のもとは素粒子・クォークなんですかい。
親:ところがこのクォーク、なんと6種類もあるんだ。
それから電子も素粒子だ。
ほかにも、おなじみの光子をはじめ、ミュー粒子、タウ粒子、W粒子、Z粒子、ニュートリノなど、
素粒子は何種類もあって、滅茶苦茶ややこしいんだよ。
八:物質の根源が何種類もあると。 そりゃすっきりしませんねえ。
親:そこで、物質の根源は短い短い短い「ひも」のようなもので、
それが振動して粒子のような振る舞いをしていると考える。
振動数やパターンの違いで素粒子が何種類もあるように見える、
というのが「ひも理論」なんだな。
八:なんだあ、簡単な話ですね。
親:いやいや、そうはいかねえ。 「ひも理論」を突き詰めていくと、
空間は10次元、時間を入れて11次元でないとおかしい、って話になってくるんだ。
八:なんですかそりゃ〜。
なんでまたモノの根源がそんなにややこしいんですかー!
子供にもわかるくらい単純で簡単じゃいけないんですかー!?
親:おお、いいところに気がついた!
なぜこれほど複雑なのか、それもまた、ひとつの重要なテーマなのだ。
あるいは、なぜわれわれ生物は原子に比べてこんなに大きいのか、とかな。
八:小さかったら風で吹き飛ばされちゃうからでしょうかねぇー。
親:・・・あえて突っ込まんことにするわ。
もうひとつの最前線のテーマは、「宇宙論」だ。
八:こんどはでっかい話でやんすね。
親:宇宙の始まり「ビッグバン」とはそもそもなんだったのか、なぜおこったのか。
宇宙の構造はどうなっているのか、なぜそうなっているのか。
宇宙はこれからどうなっていくのか・・・。
八:どうなっていくんですか。
親:それはまだわからない。
八:ありゃあ〜。
親:わからないなりに、どこまで研究が進んでいるのかを、素人にもどうにかわかるように解説してくれている。
サイモン・シン「宇宙創成」、ミチオ・カク「パラレル・ワールド」なども面白かったが、
この本も勝るとも劣らないな。
八:はあー、でも、宇宙だの、素粒子だの、気にしなくても生きていけますからねえ人間。
親:それはそうだが、こういう浮世離れした話、なかなか面白いもんだ。
科学の最先端はロマンだと思わねえか。
そして極微の世界から宇宙の果てまで想像力を羽ばたかせる人間という存在も、これまた不思議。
八:親分がマトモな話をしてるのが、あっしには一番不思議でやんす。
明日あたり熱を出して寝込んだりしないでくださいよ。
親:おやおや、俺のことを心配してくれてるのかい。
八:いえいえその逆で・・・、親分が倒れたら後釜に座るのはこのあっしでやんすよ。 へっへっへ。
親:ロマンのかけらもない奴じゃー!
(09.5.22.)