カンパニョーリ/6つの弦楽四重奏曲
(アンサンブル・シンポジウム 2014録音)



Amazon : CAMPAGNOLI/SIX STRING QUARTETS

Tower : Campagnoli/Six String Quartets


パガニーニナルディーニに続く「知られざる弦楽四重奏曲」シリーズ (いつの間にシリーズ化?)。

 カンパニョーリ/6つの弦楽四重奏曲

バルトロメオ・カンパニョーリ(Bartolomeo Campagnoli, 1751〜1827)は、イタリアの作曲家でヴァイオリニスト。
モーツァルトより5年早く生まれ、ベートーヴェンと同じ年に亡くなっています。

カンパニョーリの弦楽四重奏曲は、ハイドンをちょっと軽くした感じ。
各楽章は3〜4分と短く、「あれ、もう終わったの?」と思いながらサラサラとした快感のうちに音が通り過ぎてゆきます。
でも作曲技法はハイレベルで、たとえば第5番・第1楽章展開部でのめまぐるしい転調の連続は匠の技。

第5番・第1楽章


カンパニョーリはナルディーニ(1722〜93)と同じくタルティーニ(1692〜1770)の弟子で、タルティーニ没後はフィレンツェでナルディーニに師事しました。
その後イタリアを離れスウェーデンのロイヤル・アカデミーで演奏したりしましたが、1797年にライプチヒ・ゲヴァントハウス・オーケストラのコンサートマスターに就任。
ライプチヒでは弦楽四重奏団も結成して積極的に活動、チェロはなんとあのフリードリッヒ・ドッツアウアーがつとめたとか。
え、知りませんかドッツアウアー
超有名なチェロの教則本を書いた偉い先生です、チェロ弾く人間でドッツアウアーを知らなかったらもぐりです。
私も持ってますが最初の数ページしか弾けません(はい、挫折しました)。

ちなみにその弦楽四重奏団の名は「ゲヴァントハウス四重奏団」
現在までメンバーチェンジを繰り返しながら途切れることなく活動している名門弦楽四重奏団です。
カンパニョーリはゲヴァントハウス四重奏団の創設メンバーだったのか・・・。
人脈というか、音楽家ってつながっているんですね。

1804年にライプチヒを訪問した20歳の作曲家兼ヴァイオリニストルイス・シュポア(1784〜1859)はカンパニョーリのリサイタルを聴いています。

 「当地のコンサート・マスターであるカンパニョーリ氏の弾くクロイツェルの協奏曲を聴いた。彼のメソードはオールド・ファンッションだけど、演奏はとても素晴らしかった」

という手紙が残されています。

さて、カンパニョーリの弦楽四重奏曲、どれも素晴らしいです。
ハイドンやモーツァルトの後期のような重厚さはありませんが、逆にイタリア的な軽さ・のびやかさ・能天気さが魅力で、なんだかウキウキします。
全6曲・18楽章で60数分というコンパクトさも可愛らしい(一曲当たり10分少々)。

第2番・第3楽章 (わずか2分少々のチャーミングなロンド)


どのフレーズもどこかで聴いたような音なのですが、その繋ぎ合わされ方がハイドンやモーツァルトと微妙に違っているというか、
随所で「あれ?」と思わされるところがあり、そこが面白い。

緩徐楽章の優美でおだやかな歌も、そのままオペラのアリアに使えそうなメロディで、さすがはイタリア。

第1番・第2楽章


第5番まではすべて急-緩-急の3楽章形式ですが、第6番だけは緩-急-急になっています。
第1楽章は主題と7つの変奏で、例外的に9分もかかります。
各楽器がかわるがわるソロをつとめる、とても楽しい楽章で、長さを感じさせません。

第6番・第1楽章


知られざる作曲家の知られざる傑作、たくさんありますね〜。
底なし沼にズブズブはまっていくようで、深入りするのが怖いです(←手遅れ)。

(2020.05.09.)


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