素人による音楽形式談義・番外編 (ちなみに第1回はこちら


:木曽家・長女です(おっとり)   :木曽家・次女です(チャキチャキ)

なお、この物語はたぶんフィクションです

ベートーヴェン/交響曲第7番イ長調 作品92 第1楽章


みなさま、おひさしぶりです。コミック「のだめカンタービレ」TVドラマ化されましたね。
  主題曲のベートーヴェン/交響曲第7番も、大ヒットしているようです。

私も流行に乗って、ベト7のCD買ってみたけど、いけませんわこりゃ。

なにが?

だって第1楽章だけで13分半もあるのよ〜。 
   長すぎ! 途中でワケわかんなくなっちゃった。

まあ、アンタの集中力は、もって3分だからねえ。

自慢じゃないけど、よくウルトラマン並みだと言われるのよね〜。

それ、褒め言葉じゃないから、決して。
   それはそうと、このあいだ、「形式」を考えながら聴いたら、クラシックはすぐにわかるって話をしたでしょ。

1年も前じゃないのよ。 そんな昔のこと、覚えてないよ〜。 

ま、しょーがないか・・・。 
   この曲の第1楽章は、序奏のついたソナタ形式でできてるのよ。
   ソナタ形式については、こちらをもう一度読むよーに。

どれどれ、ふむふむ・・・、ソナタ形式ね、・・・おおっ、思い出してきた。
   ここがこうで、こうだから・・・なるほど! 謎は一部とけたっ!!

一部かいっ!

だって難しいんだもーん。

やれやれ、それでは私もクラシック・ファンの端くれ、聴きながら解説してあげましょう。

端くれなんですか。

あえてそこを強調せんでよろしい。
   文中のタイミング表示は、このCDによっています。ベートーヴェンの7番と言えばカルロス・クライバーで決まり、
   定盤、名盤、決定盤です。
   


Amazon.co.jp : Beethoven: Symphonien Nos. 5 & 7 / Kleiber

HMV : Beethoven/Symphonies No.5&7icon



序奏は、ポコ・ソステヌート(やや穏やかに)、力強い和音とともに、
  オーボエ、ついでクラリネットが序奏主題(譜例1)をのどかに歌いはじめます。

   譜例1 (上がオーボエ、下がクラリネットです)

雄大な感じね〜。山の上から下界を見下ろしているような。

0:37、弦楽器に音階を登っていくフレーズが登場。0:56、これが序奏主題と組み合わさっていきなりフォルテに。

期待が高まってくるわね〜。 さあ、ベートーヴェンが本気出してくるぞって感じー。

と思ったら、1:25、オーボエにやさしいメロディ(譜例2)が現れて、いったん静かに。

   譜例2  

「ま、あわてずに、落ち着いて」って言ってるみたいだね。

譜例2がヴァイオリンで繰り返されたあと、序奏主題と上昇音階が再び登場して、盛り上ります(ちょっと変奏されてるけど)。
  2:35、もういちど譜例2が今度はフルートに、そして同じようにヴァイオリンで繰り返されたあと、
  3:30から、ヴァイオリンとフルート&オーボエが、互いに呼び交わすような部分に。

ここ、面白いよね。「もーいいかい?」「まーだだよ」って言ってるみたいで。

そして3:51、この楽章を支配する基本リズム(譜例3)が生まれる。
   序奏部が終わって、いよいよ提示部が始まるの。
   この交響曲は「舞踏の権化」と呼ばれるくらい、リズムが重要。 とにかくノリノリなのよ。

   譜例3   

え〜、ここまで4分近くもイントロだったの? 長いわけだ〜。

この素晴らしい序奏部を、そんな風に言うんじゃないっ!!

ひいいいいい! コワイっ! ごめんなさいっ、わたしが悪かったデス!

ソナタ形式の主部ヴィヴァーチェ提示部第一主題(譜例4)が、3:55からフルートに登場。 
  小鳥が歌うような、楽しいメロディね。

   譜例4   

つづいてヴァイオリンとホルンを中心とした全合奏で繰り返されます。

ここ、カッコイー! ホルンの雄叫びがワイルドでいいわ〜。

ヴァイオリンの三連譜が上に上に登っていく、短いけどリズミックな経過句があって、
  第二主題は4:48からの軽やかに飛び跳ねるようなフレーズ(譜例5)と、4:56からの華麗に舞い上がるフレーズ(譜例6)の二部分からなるの。

   譜例5   

   譜例6    

にぎやかな小結尾が続くけれど、5:22でいったん休止するので、提示部が終わって展開部に入ったように錯覚するかも。
  でも再び息を吹き返し、まだまだ提示部は続くのよ。

うーん、いったん死んだふりをしてみせるとは、なかなかひょうきんなやつだわベートーヴェン。

第一主題の全合奏で、大々的に盛り上がって、6:01で提示部は本当に終わり。
  つづいて6:02から8:14は提示部の繰り返し

これはまったく単純な繰り返しなんだよね。

そうだけど、これだけ内容の充実した曲だと、繰り返しでも全然退屈しないでしょ。

ノリがいいしね。 ところで、この交響曲第7番って、何年に作曲されたの?

1812年よ。 初演は大成功で、第2楽章がアンコールされたそうよ。
  そして、3ヶ月のうちに、さらに3回も再演されたというから、ベートーヴェンの交響曲の中では、ダントツの人気曲ね。

なるほどー、最初から大成功だったの。

さて、8:15から展開部。 基本リズム(譜例3)の上に、変形した第一主題がカノン風に演奏されて始まるんだけど、
  だんだん主題の展開というよりは、基本リズムでひたすら大騒ぎって感じになってくるわね。

うわあ、これはじっと座って聴くのは無理ね、ノリノリだわ、体が動いちゃうよ。

飛び跳ねるなり、踊るなり、回るなり、ご自由にどうぞ。

くるくるくる、目が、目がまわりました〜。

9:05あたりでいったん静まるんだけど、もう一度、徐々に盛り上がって、盛り上がって、盛り上がって、
  10:08、クライマックスからそのまま再現部・第一主題になだれ込んでいくの。

ここもカッコイー!

素晴らしい再現部の入りね。主題は提示部よりもオクターブ低く演奏され、男性的でたくましい感じ。
  と、突然流れが止まって、オーボエが優雅に第一主題を歌う。

あれれ、短調に転調して、しんみりした感じになっちゃったよ。

再現部第一主題のあとに、こういう、曲に変化をつける部分を挿入するのはベートーヴェンお得意のテクニックなの。

たしかに、この部分のおかげで、その前後の大騒ぎぶりがさらに映えるっていうか。

曲はすぐに勢いを取り戻して、11:07から第二主題の再現、あとは提示部と同じように進んでいくの。

いったん休止してまた息を吹き返すところもおんなじだね。

12:19から、終結部。 12:35から、ヴァイオリンを中心に最後のクライマックスを作り上げ、基本リズムで踊り狂うように楽章を閉じます。

いやー、ノリノリの曲ね。 これはホント、踊っちゃうわ。

(06.11.17.)


P.S. 07.3.25. 「二部形式(スカルラッティ/ソナタ K.9)」を追加しました。

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