ヴィオッティ/ヴァイオリン協奏曲第22&23番
(ローラ・ボベスコ独奏 クルト・レーデル指揮 ライン・パラティナ国立管弦楽団)
(1980録音)



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音楽史上、ヴァイオリン協奏曲を一番たくさん書いた作曲家と言えば、おそらくはダントツでヴィヴァルディでしょう。
数百曲にのぼるはず。

ほかに、タルティーニ、ロカテルリ、ルクレールなども数十曲以上書いているようです。

しかし古典派以降となるとずいぶん少なくなります。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ(1755〜1824)の、29曲が最高ではないかと。

まあ、29曲でもたいがい凄いですけど・・・。


モーツァルトより一歳年長のヴァイオリニスト兼作曲家・ヴィオッティ、たくさん書いたヴァイオリン協奏曲のほとんどは、あえなく忘れ去られてます。
しかし「第22番イ短調」だけは、ヴァイオリン学習者の「レッスン用名曲」として、現在もヴァイオリンを学ぶ人を悩ませているそうです。

じつはこの曲、ベートーヴェンブラームスが大変愛好していたことでも知られています。
言われてみれば、それほど技巧を強調せず、ヴァイオリンにのびのび歌わせるところなど、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲に近いテイストを感じます。

ブラームスにいたっては、

 「これは構想の点で注目すべき自由さを持つ傑作です。
 作曲者があたかも空想にふけっているかのように響きながら、すべては見事に構成され、実施されています。
 このような最上のものを、一般の人々が理解せず、敬意を抱かないおかげで、我々のようなものでも生きてゆけ、名声を得ることができるのです」

と、もうべたほめであります。

ブラームスの友人でヴァイオリニストの、ヨーゼフ・ヨアヒム氏の証言

「私は部屋でブラームスと幾度となく合奏したが、そのたびに2回、3回と続けてこの曲を演奏しなければならなかった。
 ブラームスは顔を紅潮させ、肩をすぼめ、喜びのうなり声を上げ、鍵盤をかき鳴らしては感極まっていた」

・・・ちょっと危ないですよブラームス
というかヨアヒムくん、うんざり入ってない?


さて、玄人筋からの高評価のわりに、あまり聴かれないこの曲ですが、

 「たしかに大変いい曲ですっ!」

と、素人筋からも申し上げたい。

 第1楽章 (ローラ・ボベスコ独奏)
 

なんというか全編カンタービレ最初から最後まで全部「うた」なのであります。
オケを従えて綿々と歌いつづけるヴァイオリン、協奏曲というより、ヴァイオリンのための長大なアリアと思って聴きましょう。
イタリアの青空のような(見たことないけど)、切なく澄み切ったカンタービレ。
つぎつぎと繰り出される甘くチャーミングなメロディ。
これぞ音楽であります。

ローラ・ボベスコ(1921〜2003)の演奏は、線が細くてナヨナヨした音がこの曲にぴったり。
正直、音程がちょっとだけ甘い気がしないでもないですが、曲への共感が半端なく伝わってくるハートウォーミングな演奏。
「綺麗な曲でしょ〜」と微笑みながら弾いてるみたいで良いですねえ。
こういう曲を鼻息荒く完璧にきっちり弾いて「どうだ!」と言われても、なにか違う感じがしますものね。

カデンツァは名ヴァイオリニスト兼作曲家・イザイによるものです。

(09.4.25.)

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