ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ほか 
(パトリシア・コパチンスカヤ独奏 ヘレヴェッヘ指揮 シャンゼリゼ劇場管弦楽団)



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 ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲 作品61」

名曲です。 美しい曲です。
悠揚迫らぬというか、品があるというか、高貴なオーラがたちこめているというか。
ハイフェッツ、シェリング、グリュミオーなどの名盤で、LP時代から私も親しんできました。

しかしじつは私、この曲聴くことを苦手としております。
なぜかというと、過去に二度実演に接し、

 二度とも爆睡

してしまったからであります。

この曲は長大で、40分以上かかりますが、技術的には(プロにとっては)かなり容易だそうです。
重音すら、第3楽章まで出てきません。
第1楽章など、極端な言い方をすれば、転調しながら音階を上下しているだけ。
それが絶美の名曲になってしまうのがベートーヴェンの凄さですが、
逆にテクニック的な見せ場がないので、ヴァイオリニストは音の美しさ・音楽性・表現力を直に問われます。
技術的には容易だが演奏は至難、といわれる所以であり、凡庸な演奏の場合、聴衆も意識を保つことが至難となります。


さて、「自然児」「爆発系ヴァイオリニスト」(なんじゃそりゃ)などと呼ばれるパトリシア・コパチンスカヤの録音。
指揮はヘレヴェッヘ、当然のようにピリオド楽器使用。

独奏ヴァイオリンが入ってきて第一主題を奏でるところで、「あれ?」と思いました。
スコアで確認してみると、やっぱり、コパチンスカヤ勝手に音を増やしてます(のだめか)

独奏ヴァイオリンは奔馬のように駆け回ります。
強弱・テンポは自由自在、そして随所に楽譜と違う音。
でも、決してキワモノではなく、しっかりしたベートーヴェンの世界。
そんな彼女をがっちり支えるオケも素晴らしい。
楽章全体にただよう軽やかで洗練された味わいも独特。
非常にフレッシュな名演奏、こりゃ退屈する暇もありません。

カデンツァは、ベートーヴェンによる同曲のピアノ協奏曲ヴァージョンのカデンツァをコパチンスカヤ自身がアレンジしたもの。
途中でティンパニが乱入することで知られています。
ここはさすがに超絶技巧です。
いや、これは超絶どころではないぞ、どうすればヴァイオリンひとつでこのような・・・?
と思ったら、やっぱりここだけは二重録音でした、なあんだ。でも迫力あります。

清らかな祈りのような第2楽章
静かに美しい音を紡いでゆくコパチンスカヤ
なぜだか眠くなりません。

そして第3楽章
何度も繰り返されるロンド主題、コパチンスカヤは毎回音色を変えたり、独特なアクセントをつけたり、即興的な工夫で飽きさせません。

 ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲より(コパチンスカヤ独奏)
 

いやー、面白い演奏だった。
いま、「ベトコン」CDのファースト・チョイスは、これで決まりでしょう。


同時収録の「二つのロマンス」は、速めのテンポながら濃厚な味付け、小品らしからぬ重量感で聴きごたえあります。

最後に、習作のヴァイオリン協奏曲の第1楽章(断片)が収められています。
1790年から92年(ベートーヴェン20〜22歳)に書かれたと推定されるそうです。
初めて聴きましたが、若さにあふれる元気のよい曲。
未完成のため途中でふっつり終わるのでびっくりします。
コパチンスカヤみずから、ベートーヴェンの自筆譜を参照したうえでの演奏とのことです。


「ベトコン」のイメージを変える、エポックメイキングな録音なんじゃないかと思います、これ。
パトリシア・コパチンスカヤ、凄いヴァイオリニストですっ!


さてさて皆さま、2010年も大変お世話になりました。
来年もよろしくお願い申し上げます。

(10.12.31.)


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