昨日(6月20日)は、日曜日ですが朝から仕事でした。
とはいえ午後5時には終わったので、夕食は家で家族と一緒に。
「サザエさんを観ながら晩御飯」という、わが国に古くから伝わる伝統儀式をしめやかに執り行いました。
ところで「サザエさん」の主題歌に、
「買い物しようと街まで出かけたが 財布を忘れて愉快なサザエさん」
という歌詞がありますが、これって愉快ですか?
普通の人なら軽く絶望してその場にくず折れ、空の青さを呪うことでしょう。
このシチュエーションを「愉快」と言い切る主題歌に、底知れない恐ろしさを感じる今日この頃です。
それとも、なんでも「愉快」で済ませてしまう適当さとバイタリティーこそが、昭和の底力なのでしょうかっ?
そんなことをつらつら考えていると夜も良く眠れますが、
財布を忘れて出張に出かけた夢を見てうなされました。
夢でうなされるといえば、なぜだか連想するのが
イザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 作品27(全6曲)」(1924)。
名ヴァイオリニスト兼作曲家 ウジェーヌ・イザイ(1858〜1931)は、ヨゼフ・シゲティの弾くバッハの無伴奏を聴いて「感動したっ!!」と叫び、
「自分も無伴奏書く、書くったら書く!」とばかりに、家に帰ってほぼ24時間で一気に6曲、書いてしまいました。
熱にうかされて書いたようなこの曲は、イザイの最高傑作となりました。
しかし・・・どことなく怖さを感じるのですよ。
第2番は、4つの楽章に「妄執」「憂鬱」「亡霊たちの踊り」「復讐の女神たち」なんてタイトルがついてます。
バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番のメロディで晴れやかに始まるのですが、
徐々に変容し、グレゴリオ聖歌「怒りの日」が引用されと、なにやら不穏な雰囲気。
素晴らしい曲ですが、どういう意図があるのだろう・・・?
第2番 第1楽章「妄執」(このCDの演奏ではありません)
第2番 第4楽章「復讐の女神たち」(このCDの演奏ではありません)
(なんか怖い、この曲・・・)
第3番「バラード」は最も有名な曲、やはり「怒りの日」の引用があります。
背筋を伸ばして正座して聴かないと罰が当たりそうな、ピンと張り詰めた音楽。
美女が眉間にしわを寄せて静かに激怒している様な怖さがあります(なんじゃそりゃ)。
なにしろ「怒りの日」だもんね・・・。
青白い炎のような美しさに、思わず魅入られてしまいます。
ところで、序奏部に6つの音を同時に響かせる和音があるのですが、これ、どうやって演奏するのでしょう??
第3番「バラード」(このCDの演奏ではありません)
(鬼気迫ってるわー!)
名ヴァイオリニストの曲だけに、全6曲にわたって、超絶技巧がこれでもかといわんばかりに盛り込まれてますが、
それだけではなく、ヴァイオリンという楽器の中に潜む「魔」が、うっかり解き放たれてしまったような怖さをおぼえます。
そういえばどの曲も、複雑な呪文のように聴こえませんか。。。
じつは良く理解できないところも多い曲なのですが、どうやら魅力に取り付かれてしまったみたいで、
ときどき取り出して聴いては夜うなされています。
第4番(このCDの演奏ではありません)
第6番(このCDの演奏ではありません)
(10.6.21.)
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