アルヴォ・ペルト/タブラ・ラサ
(ギドン・クレーメル、タチアナ・グリンデンコ:ヴァイオリン、アルフレード・シュニトケ&キース・ジャレット:ピアノ ほか)
(1977〜84録音)



Tower : アルヴォ・ペルト/タブラ・ラサ




2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は日に日に緊迫の度を増し、いたたまれない気持ちになります。
今日は心を鎮めるために久しぶりにこのCDを聴きました。

 アルヴォ・ペルト/タブラ・ラサ

エストニアの作曲家アルヴォ・ペルト(1935〜)の名を全世界にとどろかせた名盤。
「現代音楽」とは難解でやかましく不協和音だらけの代物というイメージが強かった1980年代に彗星のように現れ、
「現代音楽がこんなに綺麗でいいかしら?!」と音楽ファンに衝撃を与えました。

冒頭を飾る「フラトレス」(ヴァイオリンとピアノのためのヴァージョン)は、ギドン・クレーメルキース・ジャレットの共演がひとつの事件です。
ジャズのアルバムをたくさんリリースしてきたECMレーベルならでは。
きらめくようなヴァイオリンのアルペジオに続いてピアノに呈示される聖歌風の主題が反復・変奏される作品で、最初から最後まで全ての瞬間が美しい。
透明で繊細なガラス細工を上下左右から眺めるかのようです。
「フラトレス」とは「親族、兄弟、同士」といった意味だそうです。

 フラトレス
 

聖歌のようなメロディを使っているのに古臭くなく、しっかり現代的。
「不思議だな〜」と何度も繰り返し聴きました。


「ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌」は鐘の音で始まり、弦合奏が嘆きの歌を歌います。
弦は徐々に厚みと音量を増し、ついには奔流となり激しい慟哭が聴く者の心を揺さぶります。

 ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
 

アルバムの白眉はタイトルにもなっているアブラカダブラ・・・じゃなかった「タブラ・ラサ」
「タブラ・ラサ」とは何も書かれていない白紙の状態のこと。
哲学者ジョン・ロックが、生まれたままの無垢な魂の意味で使いました(高校の倫理社会で習ったなあ・・・いまは「倫理」か)。
2つのヴァイオリンとプリペアド・ピアノと弦楽のための作品で、ふたつの楽章からなります。

第1楽章"Ludus"はソロ・ヴァイオリンの「キイイイイイッ」という虚空をつんざく高音で開始。
時計の刻みを思わせる弦の伴奏をバックにソロ・ヴァイオリンが繊細に歌い、プリペアド・ピアノが不協和音を楔のように打ち込みます。
徐々にクレッシェンドしてゆき、7分ごろからクライマックスにかけての混沌とした迫力には圧倒されます。

 タブラ・ラサ 第1楽章"Ludus"
 (このCDの演奏ではありません)

第2楽章"Silentium"は、弦楽器の振り子のような音型が、プリペアド・ピアノのアルペジオを交えながら淡々と続きます。
タイトル通りの静謐な楽章ですが、この世のものではないような緊張と深い祈りに満ちています。
美しいけれど甘くはありません。

 タブラ・ラサ 第2楽章"Silentium"
 (このCDの演奏ではありません)

早く平和が訪れますように・・・。

(2022.04.24.)


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