アントニオ・ソレール/ソナタ第10番ロ短調



Amazon.co.jp : Soler: Sonatas for Harpischord, Vol. 7 / Rowland

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Soler: Harpsichord Sonatas, Volume 7

前項で取り上げた、ソフィー・イエーツは、しっとりとした演奏をする上品系チェンバリストです。
しかしチェンバロには、がちゃがちゃとやかましい、失礼、にぎやかな曲もたくさんあって、
ソレールのソナタ第10番は、その最右翼といえましょう。

アントニオ・ソレール(またはソレル)(1729〜1783)は、スペインのカタルーニャ生まれの作曲家/神父で、
修道院の聖歌隊長や、スペイン王子の音楽教師をつとめました。
当時マドリードの宮廷にはドメニコ・スカルラッティも仕えており、ソレルは、そのスカルラッティの弟子を自認していたそうです。

ソレルの主要作品は139曲に及ぶチェンバロ・ソナタです。
スカルラッティ風の単一楽章・二部形式の作品が多いものの
演奏時間が10分近いものや、多楽章のものもあり、スペインの血を感じさせる情熱的で土くさい曲が多いのが特徴です。

さてこの第10番、とにかく激しい音楽です。
テンポはアレグロ、いきなり滝のようになだれ落ちる下降音型で始まり、十六分音符の奔流が続きます。
そして、楽器のメカニズムの限界を超えているのでは、と思われるほどの小結尾部が!(ちょっとグチャグチャ)
単一楽章のバロック・ソナタとしては例外的に長く、指定通りリピートすれば9分以上かかります。
ノリの良いチェンバロ曲がお好きなかたは、ぜひお聴きください。
私は「神父さんがこんなノリノリの曲書いていいの?」と思ってしまいました。
ソレル神父自身は一体どんな風にこの曲を弾いたのでしょう?
きっと髪を振り乱して・・・ あ、神父さんには振り乱す髪はないのかな?
 

この曲をはじめて聴いたのは、ギルバート・ロウランドの旧盤(ニンバス NI 5248  1980年)。
音を外している(?)箇所もあるのですが、じつに迫力のある演奏なので、あえて録り直さなかったのかも。
そのロウランドが95年から、ナクソスにソレルのソナタ全集を録音し始めました。
第10番はいつ出てくるのか楽しみにしていたところ、第7巻にやっと収録されました(上の写真です)
旧盤に比べ、より洗練されていながら、迫力的には全く遜色のない素晴らしい演奏です。

他の演奏者によるディスクとしては、
ロウランドに劣らぬ速いテンポながらサラリとまとめた、ヴァージニア・ブラック盤(IMPRESSION 95027)、
フォルテピアノを使用し、アンダンテに近い遅いテンポで演奏した
異色のパトリック・コーエン盤(Glossa GCD 920502)などがありますが、やはりロウランドのナクソス盤がファースト・チョイスでしょう。

これも名演です!
   ↓


(02.1.30.記)

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