アントニオ・ソレル/ファンダンゴとソナタ
(スコット・ロス 1988録音)
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18世紀の国民楽派
先日次女(高3)が、しみじみした口調で言いました。
「お父さん、背が高くて良かったねえ」
私は身長180cmです。
「おお、そうかな?」(カッコイイとか言ってくれるのかな)
「頭頂部のハゲが見えにくいもんね」
「ハゲ違うわ! ほんのちょっと薄毛になってるだけじゃ!」
「・・・そういうことにしといてあげる」
少々血圧が上がりましたが、まあ親子の会話があるだけ良しということで。
とりあえず受験がんばれ。
さて、ハゲで思い出したのですが、ハゲしい曲ってたくさんありますね(←頭の回線がショートしてます)。
バロック音楽好きの私としては、まず思いつくのがアントニオ・ソレルのファンダンゴ。
ソレル:ファンダンゴ(スコット・ロス)
アントニオ・ソレル(1729〜1783)は、スペインの作曲家で、聖職者でもありました。
アントニオ猪木と血縁関係はないようです。
ソレルは、スペイン宮廷に仕えていたイタリア人ドメニコ・スカルラッティに師事し、スカルラッティ風の鍵盤楽器ソナタを百曲以上書きました。
しかしソレルのソナタは、イタリア・バロックの上品な枠の中には収まりません。
スペインの血と風を色濃く反映したその作風は、土俗的と言いたいほど。
ある意味「国民楽派」の作曲家だったのであります。
当HPではずっと以前にソレルの「ソナタ第10番」を取り上げたことがあります。
あれも激しい曲でしたが、「ファンダンゴ」も負けていません。
「ファンダンゴ」とは芸能人がファンに配る団子ではなくて、スペインの民族舞曲。
フラメンコみたいなものかな? よくわかりませんが、男女のペアで踊る3拍子の激しい踊りだそうです。
基本的には2小節のオスティナート・バスの反復の上に繰り広げられる変奏曲であり、パッサカリアやシャコンヌに似ています。
ただ、そこはスペイン、天衣無縫で自由奔放、各変奏の長さはまちまちだし、切れ目もはっきりしないところがあるし、
オスティナート・バスが途切れる部分もあります。
つまり興が乗れば形式なんぞなんぼのもんじゃい、というイケイケイドンドン音楽なわけです。
夭折の天才スコット・ロス(1951〜1989)のCDは、炎のような音の奔流、覇気あるリズム、多彩な表情、スケールの大きな名演です。
他にソレルのソナタを9曲収録、どれもメリハリの利いた新鮮な解釈です。
ちなみに、スコット・ロスの愛弟子・曽根麻矢子もソレルのファンダンゴを録音しています。
これも素晴らしい演奏。
2014年11月現在、廃盤なのが残念です。
ソレル:ファンダンゴ(曽根麻矢子、ライヴ)
なおどうでもいいことながら、私の頭頂部は上記ジャケット写真のスコット・ロスよりはましであります。
(2014.11.30.)
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