若竹七海/さよならの手口
(文春文庫 2014)



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探偵を休業し、ミステリ専門古書店でバイト中の葉村晶は、
ボロ家で古本引取りの際に押入れを踏み抜いて落下、
なんとそこには白骨死体が!
骨折し入院した葉村晶は、同室の元女優・芦原吹雪から、
二十年前に家出した娘の調査を依頼される。
しかし、かつて娘の捜索を依頼した探偵は謎の失踪をとげたという―。
不運な女探偵・葉村晶が文庫書下ろしで帰ってきた!


祝・若竹七海&葉村晶、完全復活!



まず、この傑作をいきなり文庫で出してくれた文芸春秋社の英断に深く敬意を表します。
ハードカバーだったら1800円は下らなかったでしょうね。

先日若竹七海の、女探偵・葉村晶ものを含む短編集「暗い越流」を読みましたが、
その葉村晶が大活躍する長編が、13年ぶりに発表されました。

 若竹七海/さよならの手口

これがもう会う人ごとにお勧めしたくなるような大傑作。

骨折で入院中の葉村晶は、死期が近い往年の名女優から、20年前に家出した娘の調査を依頼されます。
親戚から「調査するふりだけでもしてくれたら本人の気が済むから」と言われ、リハビリ代わりに引き受けますが、
以前おなじ調査を引き受けた探偵は謎の失踪を遂げていました。
いっぽう、彼女が暮らす女性専用シェアハウスに引っ越してきた新しい住人は、
なにやらトラブルを抱えているようで・・・。

葉村晶もののお約束で、最初はどうってことなさそうな依頼が、関わり始めた途端に複雑で凶悪な様相を呈し、
真面目に調査(捜査ではない)しているだけの葉村晶なのに、なぜか落っこちたりぶつかったり殴られたりして、たびたび病院の厄介に。
今作でも3回くらい入院する羽目になり、スマホも2回オシャカになります。
運の悪さにため息をつきながらも、へこたれずに調査を進めるりりしい葉村晶、すでに40歳過ぎ。
あまり無理をしないようにしてほしいものです。

メインは女優の娘探しですが、ほかにもいくつかの事件が同時進行でからみます。
長編3作分くらいの材料をぎゅっと詰め込んで、しっかり調理して味付けした贅沢な構成。
独特の軽さとユーモア、ギャグも健在、でも決して下品になりません。
また葉村晶はミステリ・マニアでもあるので(ミステリ専門古書店で働いているくらいですから)、作中のあちこちにミステリの薀蓄がちりばめられています。
なので読みたいミステリが増えて大変なことになるのは覚悟して読む必要があります。
タイトルも、チャンドラーのあの有名なフレーズにちなんでいます。

13年ぶりの長編だし、急いで読んだらもったいないと、ゆっくりゆっくり読むつもりが、気が付けば一気読み。
しかし読後の満足感はひとしおでした。

長期熟成させた年代物のワインのような、薫り高いエンタテインメント小説でした。

(2014.12.28.)


警官にさよならを言う方法はまだ見つかっていない(レイモンド・チャンドラー)


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