ラインベルガー/ヴァイオリン・ソナタ全集
(トーマス・シュロット:Vn ピエトロ・バルバレスキ:Pf 2016録音)



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Tower@jp : Rheinberger/Complete Violin Sonatas

【曲目】
ヴァイオリンソナタ第1番、第2番
5つの歌Op.4より「過去」「私は木々の下をさまよう」、
7つの歌Op.41より「嵐の中で」(ヴァイオリン版)


弦楽器好き、ヴァイオリン好きの間で、かねてからささやかれている

 「ドイツ・ロマン派のヴァイオリン・ソナタが少ない問題」

について考えてみました (・・・って、私が勝手に言ってるだけですが)。

「ドイツ・ロマン派のヴァイオリン・ソナタ」といえば、まずはブラームスの3曲、素晴らしい名曲ばかりです。
で、ほかには何がありましたっけ?

 ・・・・・・・・・・・・

じつはシューマンが2曲のヴァイオリン・ソナタを残しています。
あまり演奏されることはありませんが綺麗な曲で、とくに第2番は名作だと思います。

で、ほかには?

リヒャルト・シュトラウスに23歳の若書きソナタがあります、これけっこう好きです。

あとは、えーと。

メンデルスゾーンのソナタは未出版の習作だし、ワーグナーもブルックナーもブルッフもマーラーもヴァイオリン・ソナタは書いていません
どうしたんですか皆さん? ベートーヴェンに遠慮しちゃってるとか?
フランス系の作曲家は、フランク、サン=サーンス、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、ルクー、皆それぞれ個性的なヴァイオリン・ソナタを残しているのに。

 「ドイツ・ロマン派のヴァイオリン・ソナタ少なすぎだろー!」

夕日に向かって叫んでおりましたら、このようなCDがリリースされました。

 ラインベルガー/ヴァイオリン・ソナタ全集

ヨゼフ・ラインベルガー(1839〜1901)は、ブラームス(1833〜97)とほぼ同年代。
リヒテンシュタインの生まれですが、ドイツ・ロマン派に含めてよいと思います。
生前は母国やドイツで名声を博していたそうですが、現在はほぼ忘れられています。
宗教曲とオルガン曲を得意とし、オルガン業界・合唱業界では現在も有名らしいですが。
私はこれまでに「ヴァレンシュタイン交響曲」「オルガンとヴァイオリンのための組曲」「オルガン協奏曲」をご紹介してます。
けっこう好きな作曲家の一人です。

ラインベルガーのヴァイオリン・ソナタは、これが世界初録音のようです。
つくづく「忘れられた作曲家」の名に恥じない人です。

「ヴァイオリン・ソナタ第1番 変ホ長調 作品77」(1874)の第1楽章は明るく伸び伸びとして、ベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」を連想します。

 

第2楽章のシンプルな可憐さも好感度大。

 

第3楽章・タランテラ風のフィナーレは洒落ていて、リサイタルで弾いたら盛り上がりそう(いや私は弾けませんが)。

 

「ヴァイオリン・ソナタ第2番 ホ短調 作品105」(1877)は、冒頭から憂いに満ちたメロディが魅力的。
しかし深刻すぎない、上品な香気をたたえたロマンティックな作品です。

 

川のせせらぎのようなピアノのアルペジオに乗ってヴァイオリンがたおやかに歌う第2楽章はとくにグッときます。

 

凛とした第3楽章は、響きのヴィヴィッドな動きが魅惑的。
キャッチーなフレーズを連発して聴く耳を瞬時に惹きつけるその手並みの鮮やかさ。

 

ブラームスを軽く爽やかにしたような感触といいましょうか、2曲とも演奏時間20分ほどの、コンパクトに手堅く作られたソナタです。
もちろん、ブラームスの3つのソナタを超える傑作というわけではありませんが、洒落たメロディ、活発なリズム、華々しい響きを随所で楽しむことができます。
ゴリゴリと力みかえってささくれ立ったり、野暮ったくなったりということが全くありません。
これまで録音がなかったのはあまりにも気の毒、というか不当にすら思えます。

オマケの、歌曲をヴァイオリンとピアノで弾いたものも、メロディのさらりとした流麗さが心地良いです。

ところでブラームスがヴァイオリン・ソナタ第1番を作曲したのは1880年、ラインベルガーのほうが5年以上早いんですね、ちょっと意外。
ラインベルガー
、もっと知られてほしい作曲家です。

(2018.11.6.)


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