ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第1&2番
(クリスティアン・ツィメルマン独奏 小澤征爾 指揮 ボストン交響楽団)
(UNIVERSAL 459 643-2)
Amazon.co.jp : Rachmaninov: Piano Concertos Nos. 1 & 2
Tower@jp : Rachmaninov: Piano Concertos No.1&2
クリスティアン・ツィメルマンは1975年、18歳でショパン・コンクールに優勝した名ピアニスト。
おそろしくマジメな人で、良質の演奏をするためコンサートの回数を絞り、
CDも納得のいくものしか出さないので、活動期間のわりに枚数は少ないです。
ピアノの構造や調律にも造詣が深く、楽器の選択にはとてもうるさいとか。
まるでピアノの求道者のような、こだわりの巨匠です。
そのツィメルマンの最新CDは、なんとラフマニノフの協奏曲1&2番というポピュラー名曲。
1番はともかく2番のほうは、手垢がついてるといっては失礼ですが、
すでに無数のピアノニストが演奏し録音し、ありとあらゆる解釈がなされ、
数え切れない位のCDがあって、出だしのとこくらいは誰でも聴いたことがあるはずです。
これを今更ツィメルマンほどの人が録音するとは、
たとえて言えば、ミシュランの3つ星シェフがスパゲッティ・ナポリタンを作るようなもの。
普通に作ったのでは「なーんだ」と言われるし、奇をてらって妙なことをしても「あざとい」と言われることでしょう。
たいへん難しいチャレンジです。
ですが、これが素晴らしいのです。
遅く・深〜く弾かれた序奏に続き、一転、第一主題ではテンポを速めます。
このスピードでは音楽が乱れてしまうのではないかと心配になります。
しかしさすがです。 どんなに速いパッセージでも粒立ちの良い輝かしい音。一音たりとも弾き飛ばすことをしません。
しかも微妙な陰影にも不足せず、メリハリのある雄弁な音楽が展開されます。
そしてツィメルマンの大きく揺れ動くピアノにぴったり合わせる小澤の指揮。
なんで全然ずれないんだ〜。 凄い。
かなり入念なリハーサルを重ねたことでしょう。
盛り上げるべきところは盛り上げ、歌うべきところは歌い、隅々まで磨き上げ、「完璧」と言いたくなる演奏です。
とくにビシバシ決まってゆく華麗で速いパッセージには、ほとんどスポーツ的快感を感じます。
そして演奏全体を貫く、いわく言いがたい「気品」。
ムード音楽的に演奏される事が少なくないこの曲、これほど気高い演奏はないですよ、きっと。
この曲をはじめて聴く人にも安心してすすめられ、曲の隅々まで知り尽くしている人にも楽しめる名演。
いやあ、まいりました〜。
第1番は、いままであまり真剣に聴いた事がなかったのですが、テンションの高い、ドラマティックな、なかなかの名曲ですね。
これまた演奏のほうは、見事というほかありません。
(04.5.30.記)
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