ペルゴレージ/スターバト・マーテル

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「スターバト・マーテル」は、「悲しみの聖母」と訳されます。
イエス・キリストが十字架にかけられたときの聖母マリアの悲しみを歌ったラテン語の詩です(成立は13世紀)。
息子が殺される母親の嘆きを描くなんて、悪趣味な詩に思えますが、
実際には宗教的で格調の高い韻文で、キリスト教聖歌の一つとして
「聖母の七つの悲しみの日」(9月15日)のミサに歌われます。(歌詞 → クリック

この詩には、数々の作曲家達も曲をつけてきました。
パレストリーナ、アレッサンドロ・スカルラッティ、ドメニコ・スカルラッティ、ヴィヴァルディ、ハイドン、
ボッケリーニ、ロッシーニ、ヴェルディ、ドヴォルザーク、シマノフスキ、プーランク ・・・
これらあまたある「スターバト・マーテル」のなかでも、最高傑作といわれているのが、
夭折の天才・ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710〜1736)の作品です。

ソプラノとアルトの二重唱に弦楽というシンプルな編成で、美しいメロディとハーモニーを響かせる30分ほどの音楽。
病弱であったペルゴレージの最後の作品でもあります。
発表当時、あまりの流麗さから、「宗教音楽というよりオペラ・ブッファのようだ」と批判されたほどですが、
それだけ美しい曲であるということにほかなりません。

「宗教音楽なんてワケのわからないもの、聴く気がしない」
とおっしゃるような方でも、この曲にはすーっと入っていけるのではないかと思います。

私の愛聴盤ですが、現代楽器によるものでは、デュトワ指揮/アンダーソン&バルトリ独唱のもの。
澄み切った美しい演奏です。 あまりにもきれいすぎてムード音楽のよう。
悲劇性や宗教性を強調せず、速めのテンポでさらりと流し、ひたすら天国的に美しく響かせるこの演奏、洗練の極致と言えましょう。

 第1曲”Stabat Mater Dolorosa"
 

「ただ美しいだけの演奏なんて、物足りないぞ〜!」とおっしゃる向きには、
古楽器による、アレッサンドリーニ指揮/コンチェルト・イタリアーノ盤を。
弦は一声部ひとりだけ(5人)の最少人数編成、完全に室内楽です。
鋭角的な古楽器奏法でアクセントを効かせ、歌唱も表情たっぷり、聖母マリアの慟哭を見事に表現した、個性的で緊張感あふれる演奏です。

 第1曲”Stabat Mater Dolorosa"
 

なお私、ペルゴレージに限らず、「スターバト・マーテル」という曲が大好きでして、
どのくらい好きかというと「スタバ」と聞くと「スターバックス・コーヒー」でなくて「スターバト・マーテル」を連想してしまうくらいです。
(なお、田舎ものの筆者は、スターバックス・コーヒーに入ったことが数えるほどしかないという事実は、トップ・シークレットです)

(02.12.27.記)

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