ジャニス・イアン/奇跡の街(1977) 愛の余韻(1976)

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1970年代、ジャニス・イアンというシンガー・ソングライター(これ死語?)がいました。
最近、椎名林檎が、彼女の ”Love Is Blind”をカバーしたりして、
少し(少しだけ)注目されている気もしないでもないですが、公平に言って、ほとんど忘れ去られています。
でも70年代には一世を風靡していたんですよね、この人。

さてさて、古いCD(持ってるんだこれが)のほこりを払って聴いてみると、いや懐かしい。
いい声です。 少しハスキーで、知的な歌い方。 
ついついとっかえひっかえ、何枚も聴き込んでしまいました。
しかし・・・歌詞が暗いですね。
失恋の心情を文学的/屈折的に表現したり、前衛詩みたいなのがあったりするのが、いかにも70年代です。


「ミラクル・ロウ(奇跡の街)」というアルバムに収録されてる”Will You Dance?”は、
ドラマ「岸辺のアルバム」に使用され、日本で大人気となった名曲。



歌詞をちょこっと拙訳させてもらいますと、

 窓の向こうで だれかが待っています
 階段の下では だれかが泣いています 
 死者と死にゆく者たちのために預言者が残した言葉の中で
 だれかが溺れています
 だれかが嘘をついています だれも信じません

 だれかが死にかけています
 通りはパニックで おさまりそうもなく
 だれかが逃げ出します
 列を作って聖なる革命と 幻影のパレードを待ちます
 だれかがとってもいいことを楽しんでいます
 
 Will you dance ?  Will you dance ?
 キャビアと薔薇の香り
 子供達に教えておきなさい
 親密そうに見えるふるまい方を
 Will you dance ?  Will you dance ?
 朝の光はファンタスティック
 娼婦になるのはロマンティック
 それとも退屈でしょうか?

 あなたとわたしが滅びたら
 生き残るのは誰でしょう?

 誰かが血を流しています
 夜は真紅に染まり
 見知らぬ同士が光の中で
 突然出会うのです

 ひとりずつにあいさつしながら
 それぞれの人生が瞬きながら走り抜けてゆきます
 溌剌とした人々の目の前を

 Will you dance ?  Will you dance ?
 ロマンスとビッグ・サプライズに賭けてみませんか?
 Will you dance ?  Will you dance ?
 ロマンスとビッグ・サプライズに賭けてみませんか?


・・・1977年の曲なので、もう25年来聴いているのですが、いまだに意味がわかりません (^o^;)。
しかしとてもきれいな曲で、この曲が収められたアルバム "MIRACLE ROW" が最高傑作じゃないかと私は思ってます。

昔聴いて衝撃を受けた”Take to the Sky”って曲なんて、シンガーソングライターの領域を超えています。
プログレッシブ・ロックじゃないですかこれ?
26歳のうら若き女性が作る曲ですか?



 朝の空は青く 夜の空は赤い
 船乗りは鷲の飛行を見て天候を知る
 私に翼があれば 歓喜して飛び立つだろう

 故郷の綿畑に黒い雲が広がる
 人はみな心に砂漠を抱えた離れ小島
 Take to the sky・・・
 どこにも行くところはないけれど、飛んでいこう
 これまでの人生のすべてを思い起こす
 暗く寒い九月に 鷲は飛び立った
 私はとどまらねばならなかった
 空虚な空に向かって川のような涙を流した
 誰か私を空に送ってよ 私は飛び去りたい

 一人ぼっちになるのは簡単なこと
 聖人になるのもたやすいこと
 でも何の意味もない 明日に破れ目を作るだけ
 誰かが 何もしたくない 何も見たくない 何もほしくない と言う
 誰も何も言わず 頭の上に落ちてくる斧をただ待つだけ

 陽光が降り注ぎ 明るく照らす
 私は不平を言わない 何も言うことがないから
 I'll fly away , I'll fly away
 眼を閉じて飛ぶ勇気があれば もう戻れなくなるまで高く飛べるだろう

 誰かが誰かを孤独になればいいと思う
 誰も愛だけでは落ち着きを得られない
 どれほどの猶予が許されるのだろう?
 嘘をつくのが容易になり こっそりと騙し 震えながら どもりながら
 空へと昇ってゆき 明日に釘を打ち付ける


1976年のアルバム、「愛の余韻 "AFTERTONES"」には、名曲"Love Is Blind" がおさめられています。



 愛は盲目
 愛はただ哀しく
 愛には明日はない
 あなたが去ってから

 愛は盲目
 私はつぶさに憶えている
 夏の暑さの中の快楽
 色あせる冬

 どれほどかかるだろう 
 忘れてしまえるまで
 出会ったその日から
 ずっと燃えていたのに

 愛は盲目
 愛は無慈悲
 愛は私を傷つけ 去って行った

 愛は盲目
 愛は果てしなく
 私は昨日の思い出の中で 
 ゆっくりと息絶えてゆく

 自分の泣き声で目を覚ます朝
 誰かが私のために泣いてくれてもいいのに
 すべて終わったの そっとしておいて

 愛は盲目
 愛はあなたの愛撫
 愛はやさしさ
 束の間の苦痛

 愛は盲目
 私はつぶさに憶えている
 夏の暑さの中の快楽
 色あせる冬


このアルバムではほかには"Belle of the Blues"という曲がお気に入り。
堂々としたアーバン・ブルースの名曲です。



 私はブルースの華 見ればわかるでしょう
 勝とうが負けようが 私には同じこと
 私は稀覯本を並べた古い本棚で生まれ
 本とTVを相手に一人で生きている

 老齢年金を受けながら 化石のように生きている
 ノスタルジアにひたるなら レコードをかける
 輝ける日々の思い出 心の傷はもう冷えた
 「光るものすべてが金ならず」
 愛は無料ではないの

 人は生まれ 人は死ぬ 私はたぶん投げ捨てる
 でも最後には私のもの 
 誰にも「降参しなさい」「黙って降りなさい」と言う権利はない
 私は大声で叫びながら降りてやる
 「返しなさい それは私のものよ」
 
 (以下略)


ジャニス・イアンは、80年代に入り、私生活や契約上のトラブルから一時引退同然になっていたようですが、
90年ごろから、また活動を再開、現在も元気でそれなりに活躍しているようです。
(私は90年以降の作品は聴いていないので、残念ながらコメントできないのですが・・・)

(02.7.29.記)


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