ジャニス・イアン/The Light at the End of the Line(2022)



Tower : The Light at the End of the Line


ジャニス・イアンの「白鳥の歌」


ジャニス・イアン(1951〜)16年ぶりのニュー・アルバム。
そしてこれが最後のスタジオ録音盤であり、今年(2022年)のツアーを終えたら現役を引退するのだとか。
椎名林檎「あたしは別の人間で ジャニス・イアンを自らと思い込んでいた」と歌ったジャニス・イアンが引退ですか・・・!

 ジャニス・イアン/The Light at the End of the Line

じつに渋いアルバム、そしてシンプルです。
はっきり言えば地味ですが、初期のギター弾き語りスタイルに原点回帰したとも言えます。

1曲目 "I'm Still Standing" でいきなり「老い」を真正面から歌い上げます。

 私の顔のしわを見て
 それは私の人生の地図
 深くなればなるほど
 人生は深みを増す


 I'm Still Standing
 

70年代には「17歳の頃」を歌っていたジャニスも、いつのまにか70歳。
いろいろあったみたいですが、良い歳の取り方をしておられるようでなにより。
私もいい歳ですが、この曲聴いたら「生きていてもいいんだ・・・」って気持ちになりました(←大丈夫か)。

メッセージ性も濃く、1960年代のフォークソングのような、社会変革の熱いエネルギーを感じさせる曲も。
そういえばデビュー曲「ソサエティーズ・チャイルド」(1966!)も、社会のタブーに正面から切り込んだ曲でしたっけ。
"Resist"は、これぞ21世紀のプロテスト・ソングと呼ぶにふさわしいパワーのある曲。

 

なお私は日本盤を買ったのですが、歌詞対訳はついていなくてちょっとがっかり(ライナーノートと英語の歌詞カードはついてます)。
でも歌詞は平易な英語で書かれていて、私ごときにも十分理解できるほど。
70年代のジャニスは、難しい単語、持って回った言いまわし、文学的な比喩を多用し、
歌詞対訳を読んでも意味が分からない曲がたくさんあったものですが・・・。

ホームタウン、ニューヨークを舞台に過ぎ去った時代を懐かしむ、ジャジーでせつないバラードもあります、これ素敵。

 Summer in New York
 

タイトルナンバー "The Light at the End of the Line"も、来し方行く末を静かに振り返る曲。

 瞬きをする間に 全ては過ぎ去ってゆく
 思い出は色あせ 最後には沈黙だけがそこにある
 でも歌えば思い出す あのきらめきはまだそこに
 それは行列の最後尾の灯り


なんというか、もう悟りを開かれたんでしょうかね、ジャニスさん・・・。

 The Light at the End of the Line 
 

アルバム最後は未来への希望を歌い上げるカントリー・ナンバー "Better Times will Come" です。
この曲だけは多くのゲスト・ミュージシャンが参加し、ジャニスのラストソングを賑やかに彩ります。
ダイアン・シューアが巧みなスキャットを聴かせてくれます、久しぶりに聴いたなこの人の声。

 Better Times will Come
 

シンプルだけど深みのある、素晴らしい作品でした。

(2022.05.08)


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