ニルス・ゲーゼ/交響曲第1番&第5番
(ホグウッド指揮 デンマーク国立交響楽団)
(Chandos CHAN10026)



Amazon.co.jp : Gade/Symphony 1 & 5

Nieis Wilhelm Gade(1817〜1890)。
「ガーデ」と読みたくなりますが、ニルス・ウィルヘルム・ゲーゼと発音するのが正しいそうです。
デンマークの作曲家です(最近なぜかデンマークの音楽をとりあげることが多いなあ)

もとはコペンハーゲン王室オーケストラのヴァイオリン奏者。
25歳で交響曲第1番ハ短調(1842)を作曲しますが、若造が「ボク交響曲を作ったんで、演奏してください」なんて言っても、まあ相手にされませんわな。
結局コペンハーゲンでは演奏してもらえません。
そこで思い切ってフェリックス・メンデルスゾーンに楽譜を送ると、これが気に入られ、ライプツィヒで初演され大成功。

 ゲーゼ:交響曲第1番・第4楽章
 (元気いっぱい、エネルギッシュなフィナーレ)

ゲーゼもそちらに引っ越して、ライプツィヒ音楽院で教鞭をとるかたわら、ゲヴァントハウス管弦楽団の副指揮者に。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲 ホ短調の初演では指揮を受け持ちました。
またロベルト・シューマンとも親交を結び、彼のピアノ協奏曲 イ短調の初演も指揮しました。

1847年に恩人メンデルスゾーンが亡くなると、ゲヴァントハウスの主席指揮者を引き継ぎますが、
翌1848年にデンマークとプロイセンの間に紛争が勃発、敵国人であるゲーゼはデンマークに帰らざるを得ませんでした。
しかし、いわば故郷に錦を飾るというか、ハクをつけまくっての帰国。
コペンハーゲン音楽協会の終身総裁に就任し、新たにオーケストラや合唱団を設立。
さらにコペンハーゲン音楽院院長にも就任、北欧音楽界で教育者として名をなし、グリーグニールセンを教えました。

・・・と、とても偉い人らしいのですが、意外なほど知られていません。
作風は、メンデルスゾーン以上にメンデルスゾーン的 (これがよくないのかなー?)、正統的前期ロマン派で、
初期から晩年まで作風があまり変化しないところもメンデルスゾーンに似ています。
「交響曲第1番」の妖精的なスケルツォは、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」に挿入されても違和感なさそうです。
この第1番は、劇的でありながら端正、野心的な若者らしいエネルギッシュさが魅力の逸品。

交響曲第5番ニ短調(1852)は、珍しい「ピアノつき交響曲」。
ピアノを伴う交響曲といえば、ダンディ「フランスの山人の歌による交響曲」や、
スクリヤビン/交響曲第5番「プロメテウス」、ブラームス「ピアノ協奏曲第2番」(?)などがありますが、それらの先駆といえます。
ピアノはほとんど休みなしにもかかわらずあまり前面に出ず、主に伴奏やリズム刻みを担当します。

 ゲーゼ:交響曲第5番・第1楽章
 

ピアノが控えめにアルペジオを弾き続ける交響曲・・・、ピアノ協奏曲とも違う不思議な響きです。
それでも第3楽章スケルツォでは派手にソロをとって、この楽章だけはほぼピアノ協奏曲。

 ゲーゼ:交響曲第5番・第3楽章
 
 

ピアニストにはストレスがたまりそうですが、聴くものにとってはなかなか面白い曲です。

ゲーゼは全部で8曲の交響曲を残しています。最後の第8番は1871年、54歳の作。
彼は74歳まで生きましたから、まだまだ時間はあったはずですが、
「交響曲第9番はひとつあれば良い」と言って、新しい交響曲を作ることはしませんでした。
つまりベートーヴェンに遠慮したわけですね。

どの交響曲も素直にすーっと聴けてしまいます。
ひっかかりがないところが軽く見られる理由かもしれませんが、どの曲も美しくて、私は気に入りました。

(06.8.11.)


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