フランク/室内楽作品全集(4枚組)
(デイヴィッド・ライヴリー:ピアノ マリブラン弦楽四重奏団)




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Tower@jp : フランク: 室内楽作品全集

<曲目>
ヴァイオリン・ソナタ イ長調
ヴァイオリンとピアノのためのメランコリー
ヴァイオリンとピアノのためのアンダンティーノ・クイエトーゾ
ヴァイオリンとピアノのための協奏的二重奏曲
弦楽四重奏曲 ニ長調
ピアノ五重奏曲 ヘ短調
協奏的ピアノ三重奏曲第1番 嬰ヘ短調 作品1−1
協奏的ピアノ三重奏曲第2番 変ロ長調 作品1−2「サロン風」
ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための大三重奏曲 ハ短調
協奏的ピアノ三重奏曲第3番 ロ短調 作品1−3
協奏的ピアノ三重奏曲第4番 ロ短調 作品2
弦楽四重奏の伴奏つきピアノ独奏曲



昨年は、セザール・フランク(1822〜1890)の生誕190年
アニヴァーサリーと言えばアニヴァーサリーかなぁ・・・ちょっと微妙・・・な年。

それでも一応、母国ベルギーのレーベルから、室内楽作品全集(4枚組)が発売されました。

フランクの室内楽曲と言えば、超有名なのがヴァイオリン・ソナタ
リサイタルで取り上げられる回数が、ひょっとするとすべてのヴァイオリン・ソナタで一番多いかもしれない曲。
あと、ピアノ五重奏曲弦楽四重奏曲も、それほど聴かれませんが良い曲です。
なおこれらはすべて、フランク晩年に書かれ、円熟した筆致が味わえます。

 さて、その3曲以外に何かあったっけ・・・?

じつはフランク、ピアノ三重奏曲をたくさん書いているのでした! 知らなかった。
ただし、すべて18〜20歳ごろの若き日に書かれたもの。
そしてなぜかすべて「協奏的ピアノ三重奏曲」と題されています。

 「協奏曲みたく華麗なんだぜ、ただのピアノ三重奏とはひと味違うんだぜ、俺のはっ!」とアピールしているのでしょうか。

若きフランクの意気込みを感じます、このころはギラギラしてたんでしょうかね、この人も。

なおその後フランクは長く室内楽からは離れ、三十数年後にようやくピアノ五重奏曲(1880)で室内楽の世界に戻ってきます。
なにかイヤな想い出でもあったんでしょうか、室内楽に・・・?

ところでピアノ三重奏曲第1番から第3番は、まとめて「作品1」の番号を与えられています。
そういえばベートーヴェンの作品1も「3つのピアノ三重奏曲」です。

さっそく協奏的ピアノ三重奏曲第1番 嬰ヘ短調から聴いてみると・・・
第1楽章はアンダンテ・コン・モート、珍しくゆっくりした楽章で始まります。
ピアノが低音で奏でる陰鬱なリズム、チェロが葬送行進曲のようなメロディを奏で、ヴァイオリンが悲しげに絡みます。

  いい若い者の「作品1」の出だしがこんなに暗くていいんかい!

思わず喝を入れたくなりますが、このメランコリックな雰囲気、独特の美しさがあります。
ベートーヴェンやシューベルトを連想させ、若さに似合わずどっしりした風格。

 

活発なスケルツォ風の第2楽章には「運命の動機」が出て、もろにベートーヴェンの影響が。
第3楽章は、男性的でたくましいフィナーレ、やっぱりベートーヴェン風、12分以上かかる長大な楽章で、フランクの若き熱情が迸ります。

協奏的ピアノ三重奏曲第2番 変ロ長調 は、「サロン風」の副題を持ち、優雅で穏やか。
「第1番」とは対照的に春の陽光のような、翳りのない明るさ。
これは明らかにメンデルスゾーン風
若きフランク、意外に引き出しが多いというか器用で多才な気がしてきました。

 

そして協奏的ピアノ三重奏曲第3番 ロ短調 は・・・、シューマンまたはブラームス風です!(ブラームスはフランクより年下ですが)
悲劇的な第一主題と慰めの第二主題が鋭く対立する第1楽章、
連綿とつづられる安らぎの歌と、やや活発な中間部との対比が面白い第2楽章、
そしてフィナーレ・第3楽章は、緊張感に満ちたフーガ風の展開から突如静謐なコラールになったと思うと、
徐々に盛り上げて圧倒的な力強さで輝かしく曲を閉じます。

 第1楽章
 

 3曲とも名曲です!

協奏的ピアノ三重奏曲第4番 ロ短調 作品2 は、20分ほどの単一楽章の曲。
ソナタ形式の片鱗はあるものの自由な幻想曲風・・・といえば、フランツ・リスト「ピアノ・ソナタ」を連想します。
実際この曲は、リストに献呈され、リストも高く評価したそうです。
ただフランク自身は、「なんかもうひとつなんだよなあー」と思っていたらしく、ずっと改訂したいと思いながら、結局果たせなかったんだとか。
実際、それまでの3曲に較べると、ちょっと印象薄いです。

 

それにしても、セザール・フランクが初期に4曲ものピアノ三重奏曲を書いていたとは知りませんでした。
どれもユニークな美しさ溢れる、いい曲ばかり。
よく「大器晩成・努力型の作曲家」と言われますが、やはり天才的な才能を持っていたのですね。

(2013.1.8.)


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