斎藤美奈子/日本の同時代小説
(岩波新書 2018年)



Amazon : 日本の同時代小説 (岩波新書)


戦後日本純文学の流れを一冊で鳥瞰!

 「日本の同時代小説」(岩波新書)

著者は辛口文芸評論でおなじみの斎藤美奈子・・・・・・なんですが、読みはじめるとなんか違和感が。

 「知識人いかに生くべきか」が日本文学のひとつの柱だったことはお話しました。
 高度経済成長と文化の大衆化によって、六十年代以降「知識人/大衆」という図式が急激に瓦解したのもお話した通りです。 (26ページ)

「ですます調」使ってる・・・。
この人、いままでは基本「だ・である調」だったと思うんですが。
どういう心境の変化・・・・・・?
つい考えこんでしまい、なかなか内容に入って行けなかった妙な読者です。

ともかくこの本、戦後日本純文学の歴史を辿りながら重要作を数行で手際よく紹介(取り上げられる作家は300人以上)、しかも「読みたい」と思わせる力があります。
じつは私、かねてから「文庫本目録」を読むのが好きでありまして、
もちろん読む本を探すのが目的ですが、目録を読むこと自体かなり楽しい「読書体験」だったと思うのです。
本書はいわば「体系化された純文学目録」のようなもの、読みたい本が増えてエライことになっても知らないぜなアブナイ本であります。
たとえば、

 (松浦理英子の)『親指Pの修業時代』は、ある日の夕方、午睡から目覚めたら右足の親指がペニスになっていた、という女性の物語です。
 語り手の「私」こと真野一美は二十二歳の女子大生。生殖機能はないものの、かたちもサイズもペニスそっくりで勃起もする親指。
 異物を持つ「性的マイノリティ」になってしまったことで、鈍感だった一美の生活と性愛に対する認識は一変します。
 波乱に満ちた恋愛遍歴の末、性的な異端者を集めて見世物にする「フラワー・ショー」に参加する一美。
 ビルドゥングスロマン(教養小説)の形態を模した世紀末の奇譚でした。   (136ページ)

 (西村賢太の)『苦役列車』はいまや絶滅危惧種となった、本格派の私小説です。主人公は作者を思わせる北町貫多。
 高校に進学せず十五歳で家をとびだし、十九歳になったいまは日雇労働をしていますが、日当の5500円はすぐ使い果たすし、友人も恋人もいない。
 やっとできた仕事仲間の日下部を兄貴づらして風俗やソープに連れて行くものの、日下部には女子大生の恋人がいた!
 時代は80年代ですが、自虐にまみれた青春はまるで戦前。    (214ページ)


・・・・・・すみません、訂正します。
どちらもあんまり読みたくありません。
紹介されている小説を読まなくても戦後日本純文学の流れを手軽に把握できる本であり、いろんな純文学を「読んだふり」できる本です。
なお「ですます調」でも斎藤美奈子節は健在、気に入らない作家や作品はさりげなくバッサリやってますのでご安心を(?)。

(2019.01.28.)

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