斎藤美奈子/文庫解説ワンダーランド
(岩波新書 2017年)



Amazon.co.jp : 文庫解説ワンダーランド (岩波新書)

まず解説から読んじゃうアナタ必読!


「文章読本さん江」 「文壇アイドル論」など、笑えて鋭い文芸評論を書く怖いお姉さま斎藤美奈子
最新作は、「文庫解説も文芸だ」とばかり文庫本の「解説」を斎藤流に評論してみた一作。

 文庫解説ワンダーランド

私も、解説から先に読んじゃったり、本文に飽きたら解説で箸休めしたりと、文庫解説にはかねてからお世話になっております。
文庫本に解説がついてなかったら、損した気になります。
日ごろから親しんでいる文庫解説を、斎藤美奈子女史がどのような切り口でバッサバッサ切りまくるのかと期待して読んでみましたら、
意外なほど真っ当かつ真面目な「文庫解説批評」でした。

もちろん、何が言いたいのかわからない、ピントのぼやけた解説については、

 「読者は、これを読んで『伊豆の踊子』の何かがわかった気になるのだろうか。私にはチンプンカンプンだ」 (23ページ)

とバッサリです(解説者は三島由紀夫ですが・・・)。
ほかにも、賛美一辺倒の「作品の軍門に下った解説」
どうしようもない作品を褒めず貶さず高等テクで煙に巻く「社交としての解説術」
著者との交友を長々と述べて行数を稼ぐ解説 (「文庫解説に個人的な思い出話はいらない」(66ページ)と斎藤美奈子は批判的)、

もちろん、作品の新しい面に光を当てたり、読者を覚醒させる「攻めの解説」もとりあげていて、「読みたい!」と思わせてくれます。

田中康夫「なんとなく、クリスタル」マルクス「資本論」と強引に結びつけた高橋源一郎による力技解説とか、
松本清朝「点と線」のプロットの欠点を堂々と指摘した平野謙の解説とか。
今度本屋に行ったらぜひ立ち読みしたいと思います(コラコラ)。

存命の文筆家であっても正面から堂々と批判、順調に友達を減らしていると思われる斎藤美奈子女史です(度胸あるよなこの人)。
最後にふと本音が。

 「今後、斎藤の著書が文庫になるようなことがあった場合、誰か解説を書いてくれる人がいるだろうか。」(244ページ)

多分いないと思いますよ。
自分で書くしかないのでは・・・。

(2017.3.12.)


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