D・M・ディヴァイン/災厄の紳士
(1971)
(創元推理文庫)




Amazon.co.jp : 災厄の紳士 (創元推理文庫)

<ストーリー>
ネヴィル・リチャードソンは、美男子だけど怠け者。
ジゴロ稼業で糊口を凌いでいます。
今回の標的は婚約者に捨てられたばかりの富豪の娘アルマ・ヴァランス
美人でわがままで気の強いアルマにネヴィルは手を焼きますが
「共犯者」の的確な指示により「計画」は順調に進みます。
彼は夢にも思っていませんでした
とんでもない災難が、その後わが身に降りかかることを。

フーダニットの魔術師・ディヴァイン!


先日ご紹介したアントニイ・バークリー「ジャンピング・ジェニイ」
ブラック・ユーモア満載のハチャメチャなミステリでありました。
対照的に端正なフーダニットものをご紹介。

「悪魔はすぐそこに」「ウォリス家の殺人」につづく
創元推理文庫から3冊目のD・M・ディヴァイン

 「災厄の紳士」

前半はジゴロのネヴィル視点で、富豪の娘アルマを篭絡していく様子が描かれます。

こんなにうまくいくもんかねー(やろうとも思わんけど)
ハンサムはトクだねー(はい、ひがんでます)
ひっかかる娘のほうもアホだねー(はい、くやしがってます)

などと突っ込みながら読んでいると、
とんとん拍子に婚約までこぎつけてアルマの家に招かれるあたりから不穏な空気が。

なんとジゴロ氏、何者かに殺されてしまうのです。

ここから展開される精緻なフーダニットの織物。
例によって犯人の意外さはかなりのもの。
「ウォリス家の殺人」では完全にだまされたので、
「こんどこそは!」と思いながら読んだのですが・・・、やっぱりだまされました。

「いちばん怪しくない人物が犯人」という、フーダニットものの鉄則をきっちり守りながら、
最後の最後で読者に背負い投げを食らわせるハイ・テクニック
言われてみれば「あ、そーか!」と思うのですが、
読んでいるときには絶対に気がつきません。
D・M・ディヴァイン、まさにフーダニットの魔術師ミス・ディレクションの匠です。

ただね、じつはちょっと見えてきたのですよ、パターンが。
次は、次こそは、絶対にだまされないぞー!
創元さん、早く次を出すがよいわっ!
どこからでもかかってきなさい、ディヴァイン!!!

と、すっかりハイテンションになってしまうほど完成度高いミステリでした。

しいて難点をあげるならば、どの登場人物もあまり好きになれないことかな
(おかげで誰も彼も怪しく思えてくる・・・)。
これはミステリ小説なんだからと割り切って、感情移入をせずに読むのが吉。

(09.12.6.)

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