パトリック・クェンティン/女郎蜘蛛(1952)
(白須清美・訳 創元推理文庫 2014)



Amazon.co.jp : 女郎蜘蛛 (創元推理文庫)

<ストーリー>
愛妻アイリスが母親の静養に付き添ってジャマイカへ発った日、
ピーター・ダルース
ナニー・オードウェイと知り合った。
パーティーで所在なげにしていた二十歳の娘は作家修業中。
ピーターは彼女に父親のような庇護心を覚え、執筆の便宜を図ってやる。
やがて待ちに待ったアイリスの帰国、空港で喜び勇んで彼女を迎えるピーター
アパートメントに戻った二人を迎えたのは、ナニー・オードウェイの首吊り死体だった!
ナニーの友人が、彼女はピーターとの不倫に悩んでいたと言い出したことからピーターは窮地に・・・。


7月19日(土)から21日(月)は三連休。
幸い仕事も入っていないので、

 「よーし、プールで泳ぐぞー、チェロ練習するぞー」(←どちらも最近あんまりできてない)

と、数日前から期待に胸ときめかせつつ興奮していたのですが、

 連休直前に夏風邪をひいてしまいました。

咳とハナが出て、頭がボーっとします
(まあ、普段からボーっとしてますけど)。

プールで泳ぐなんて自殺行為、
家で身体のしんどさ押してチェロ弾いてると、楽器にハナがタラ〜ッと(ぎええ!)なります。
ならばマスクして弾けばと思ったけど、3分ごとに鼻をかまずにいられないので、やっぱり練習になりません。

ベッドに寝っころがって本でも読むしかないです。
で、読んだのが
 パトリック・クェンティン/女郎蜘蛛(1952)

舞台演出家のピーター・ダルースと、女優のアイリス・ダルース夫妻が探偵役を務めるシリーズ(通称「パズル・シリーズ」)の最終作です。
私はこれまで 「迷走パズル」 「俳優パズル」 「人形パズル」 「悪女パズル」 を読みました。
若い二人が出会って結婚し、一作ごとにきちんと歳を取ってゆくのが面白いシリーズで、全8作あります。
夫婦探偵が歳を取ってゆくと言えば、クリスティ「トミーとタペンス」が有名ですが、アイリスとピーターのダルース夫妻も、負けず劣らず魅力的。
クリスティより現代的で、シリーズ後半には夫婦の危機が訪れたりします。

お気に入りのシリーズの最終作、しかも長らく入手困難だった作品の50年ぶりの新訳ということで期待は大、肩に力を入れて読み始めました。

 期待は裏切られませんでした!

お話は過去の作品に比べて地味といえば地味ですが(死体は一つだし、自殺の可能性があるし)、
ひたひた迫るサスペンスと人間ドラマはそれまでの「パズル」になかったもの。
パトリック・クェンティンは1940年代後半から、パズラー小説色を薄めてサスペンスに軸足を移してゆくそうですが、
「女郎蜘蛛」では両者が良い具合にブレンドされているのかも。

不倫を疑われ、蜘蛛の巣にかかった獲物のように、もがけばもがくほど身動きが取れなくなるピーター
彼への愛情と疑念の間で引き裂かれるアイリス
徐々にあらわになるナニーの真の姿。
終盤の畳み掛けるような展開、二転三転して最後に明らかになる真相。

 読み終わって納得、やっぱり本格ミステリでした、これ。

大傑作とか、ミステリ史上に残る名作と言うと褒めすぎかもしれませんが、とにかく面白かったです。
無駄に長くなく、ストーリーはシンプル、それでいて忘れがたい印象を残す逸品です。

(2014.7.21.)

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