パトリック・クェンティン/犬はまだ吠えている(1936)
(白須清美・訳 原書房 2015)



Amazon.co.jp : 犬はまだ吠えている (ヴィンテージ・ミステリ・シリーズ)


マサチューセッツの片田舎ケンモアで今週も狩猟クラブの例会が開かれた。
ところがキツネの巣穴から見つかったのは頭部のない若い女の死体だった。
さらに狩猟用の名馬が殺され、何かを知ってしまったらしい別の女性も命を奪われてしまう。
本格ミステリ黄金期の巨匠パトリック・クェンティンウェストレイク医師シリーズ第1作!


パトリック・クェンティンといえば、「パズル・シリーズ」を筆頭とするピーターとアイリスのダルース夫妻ものが有名。
最近続々復刊されて、ミステリ・ファンの評価も上昇中です。
以前、シリーズ最終作「女郎蜘蛛」を取り上げました。

陰惨な事件を、軽妙な語り口ですらすら読ませてくれるのがクェンティンの特徴 (「名探偵コナン」に通じるものが?)。
しかもしっかり本格ミステリしていて、謎解きの妙は存分に味わえます。
そんなクェンティンの、田舎の開業医ウェストレイク医師が探偵役を務めるシリーズが初紹介です。

 パトリック・クェンティン/犬はまだ吠えている(1936)

例によって事件はエグいです。
若い女性の首なし死体。
しかし天気の話でもするみたいに軽い口調で捜査は進んでいきます。
まあ、首なし死体といえばオチはたいていアレなんですが、ひとひねりしてあるので最後までドキドキしながら読めます。
とくに「なぜ馬が殺されなければならなかったのか?」という謎が魅力的であると同時に、読者をミスリードする武器として見事でした。

それにしても、殺人犯が身近にいるというのに、みなさん鍵もかけずに寝たり、
車のキーはつけっぱなしにしておいたり、
良くも悪くものどかですね〜、と突っ込まずにはいられません。
まあ、こういうところが良いのですけどね、オールド・ミステリって。

探偵役のウェストレイク医師は、10歳の娘と暮らす40歳くらいの男やもめ。
森英俊の詳細な解説によると、シリーズは全9作、
事件のたびに魅力的な女性に出会い、「ひょっとして再婚?」と胸ときめかせるものの結局恋破れるのがお約束のようです。

おどろおどろしいタイトルと表紙に似合わず、軽く一気読みして「面白かった!」といえる一作でした。
このシリーズ、今後も翻訳されることを期待したいです。

(2015.08.15.)


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