フェルディナント・フォン・シーラッハ/罪悪
(早川書房 2011年)



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ふるさと祭りの最中に突発した、ブラスバンドの男たちによる集団暴行事件。
秘密結社イルミナティにかぶれる寄宿学校生らのいじめが引き起こす悲劇。
何不自由ない暮らしを送る主婦が繰り返す窃盗行為。
麻薬密売容疑で逮捕された孤独な老人が隠す真犯人。
刑事事件専門の弁護士が、現実の事件に材を得て描きあげた十五の物語。


前回書いた通り、カクテル作りにはまっています。
というかさらに重篤化しています。
どうやら私は「凝り性」かつ「コレクター気質」の持ち主のようで(←いまさらなにを?)
カクテル・レシピ本を手にしたが最後、載っているカクテルを全部作ってみたい衝動がムラムラムラムラ。

思えばその昔、音楽之友社の「最新名曲解説全集 」を揃えたときは
掲載されている曲をすべて聴いてやる! と思ったものですし(←無理でした)
文庫の解説目録を読めば載っている本すべて以下略。

 こ、これは病気だ・・・。

ふと気がつくと、グレナデン・シロップとかアンゴスチュラ・ビターズとかブルー・キュラソーとかアプリコット・ブランデーとか、
「なんじゃあそりゃあ!」と言いたくなる、怪しい名前のボトルが目の前に並んでいるじゃありませんか。
円高のおかげでしょうか、意外と安いんです。
2〜3回飲みに行く程度の金額で、多種多様なアルコールを揃えられちゃいます。
ああ、ホームバー作りたい(←いい加減にしとけ!)

しかし相変わらず晩酌の一環として飲んでいるので、
先日はテキーラ・サンライズダイキリマルガリータを飲みながら、鮭の塩焼き焼き茄子味噌汁白ごはんを食べました。
私の人生はどこかが間違っているような気がしないでもない今日この頃です。

そして昨夜はつい度を過ごしてしまいました。
「1日3杯まで」と決めているのに、4杯飲んでしまいました。
いかんなあ・・・罪悪感にかられます。


さて「罪悪」といえば、フェルディナント・フォン・シーラッハの新作。
前作「犯罪」同様、簡潔な文章と抑えた表現で淡々とつづられる罪悪の諸相
人間の弱さ・愚かさ・醜さをシニカルに見つめつつ、ときに不条理ともいえる結末へ。
ミステリというよりも、普通に小説として完成度の高い短編ぞろいです。
チェーホフ、カフカ、モームといった欧米の短編の名手たちの系譜に連なろうとしているのでしょうかシーラッハ
翻訳ものにありがちな持って回った表現がないのもいいですね。
しかも一編が短く、すいすい読めます。
ただし内容は決して軽くありません。
読後、心の中に残る重く冷たい何か・・・

毛色が異なるのが「鍵」
ノワールでスピ−ディーなノリ、小気味のいいオチ。
タランティーノ映画を小説にしたような切れ味でした。

「罪悪」というテーマは共通しているのですが、一編一編のテイストはかなり多彩。
どの作品が好きか(または嫌いか)で性格を判断する心理テストができそうなほどです(←悪趣味)。

思わず同情したくなる哀しい犯罪者が登場する一方で、愚かな犯人たちもたくさん。

 「こいつら馬鹿だねー、阿呆!」

と笑って、5杯目のカクテルを飲みつつ読んでる自分も負けず劣らず愚かであることにふと気がつく春の宵であります。

(2012.4.23.)

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