フェルディナント・フォン・シーラッハ/犯罪
(酒寄新一 訳 早川書房 2011年)




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一生愛しつづけると誓った妻を殺めた老医師。
兄を救うため裁判官を手玉に取る犯罪者一家の息子。
羊の目を恐怖し、その眼球をくり抜く伯爵家の御曹司。
彫像『棘を抜く少年』に取り憑かれた博物館警備員。
エチオピアの寒村を豊かにした、心やさしき銀行強盗・・・。

魔に魅入られ、社会の不条理に翻弄される犯罪者たち。
高名な刑事事件弁護士である著者が現実の事件に材を得て、
罪人たちの哀しさ、愛おしさ、奇妙さを描きあげた連作短篇集。


相変わらず週一回のプール通いを続けています(われながらよく続く)

さて先日、職場の飲み会がありまして、
若い同僚ふたりと、「普段やっているスポーツ」の話になりました。

 「いちおう週に一回泳ぎに行っててね。 一回1000mは泳ぐことにしてるんだ」

と、さりげなく(どこが?)話したところ、

 
「あ、ボクは2000mです」

 「ボクは今度トライアスロンに出ようかと」

ひええ〜! いつの間に体育会系になったんだうちの職場は!
ふたりとも私より10歳以上若いとはいえ、大したもんであります。

 「ま、負けた・・・」(←そもそも勝ち負けじゃない)

と軽く落ち込んでいると、

 「でも、チェロも習ってるなんてすごいですね、今度聴かせて下さい」

とすかさずフォロー、近頃の若い者は気配りもできます。

 「トラウマになるからやめといたほうがいい」

と言っておきました。


さて、本日のエントリーはその件とはまったく関係なく、
早川書房の新刊、フェルディナント・フォン・シーラッハ/犯罪

 極上の一冊です。

刑事弁護士である著者が、その経験をもとに書いた短編集。
ただしノンフィクションではなく、あくまでも小説です。

簡潔で歯切れのよい文章。
翻訳ものにありがちな、持って回った言い回しは皆無。
なのでササーッと読んじゃうわけですが、なんだか尾を引きます。
登場人物が心の片隅に住みついてしまったみたいに、ふとしたときに思い出してしまいます。
それだけ印象的で、密度の濃い短編集でした。

「棘」の博物館警備員の心の影。
「チェロ」のテレーザとレオンハルトの悲しい運命。
一生愛しつづけると誓った妻を殺した老医師「フェーナー氏」

 記述が簡潔なだけに、彼らの心の中をいろいろ想像してしまいます。

ちょっと笑ったのが「タナタ氏の茶わん」
来客があると銅鑼の音が鳴り響くって・・・クール・ジャパンだぜ!
しかし、もっとも戦慄したのもまた、この短編でありました。
あと「正当防衛」は・・・シーラッハ氏「ゴルゴ13」読んだことあるんじゃ?

(11.7.17.)



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