岸本佐知子/わからない
(白水社 2024年)



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岸本佐知子/わからない

書店にて

 客「探している本があるんですけど」

 店員「タイトルはおわかりになりますか?」

 客「『わからない』です」

 店員「・・・わからないとお探しできかねますが」

 客「だから『わからない』です!」

といった光景が繰り広げられるに違いない!と期待に胸躍るタイトルです。
さらに著者の岸本佐知子氏がたまたまその場に居合わせ、書棚の陰からのぞきながら

 「ああ、なんというまぎらわしいタイトルをつけてしまったのだろう私は・・・」

と、ほくそえむ・・・じゃなかったうろたえる光景まで目に浮かび、タイトルだけでお腹いっぱいです。


内容を読めば、そこには気鋭の翻訳家にして妄想エッセイストが2000年ごろからあちこちに書き散らかした(←言い方)奇想の数々がてんこ盛り。
一度に読むとめまいと消化不良を同時に起こす恐れがあるので服用量には注意が必要です(ならなぜ読む)。

「前世が見える」ひとに教えてもらった著者の前世は拝火教の僧侶だったり吃音のイギリス人文学者だったりします。

いちども訪れたことのない場所を想像力でハイレベルに妄想する「ここ行ったことない」では
ブータンの国王はかいじゅうブースカだし、お台場にはペリーの再襲来に備えて巨大な砲台が設置されています。
なるほど私も行ったことないけどお台場ってこういうところだったのか(違う)。

「ベストセラー快読」は新聞連載時に大変面白かった記憶があり、是非もう一度読みたいと思っていたのですが、20年ぶりに望みがかないました。
長生きはするものです。
「みんなのためのルールブック」の書評(206ページ)を立ち読みすれば(←コラコラ)、あなたも本屋の平台の前でグフグフ笑うアヤシイ人になれます!
警備員を呼ばれないうちに買いましょう。

(2024.06.16.)

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