俗に言う
ハープシコード・ソナタ三人衆
って知ってますか?
私が勝手に言ってるだけですが・・・。
イタリア人のドメニコ・スカルラッティ(1685〜1757)
ポルトガル人のカルロス・セイシャス(1704〜1742)
スペイン人のアントニオ・ソレル(1729〜1783)
この三人、素晴らしいソナタをたくさん残しました。
スカルラッティは約550曲、セイシャスは100曲余り、ソレルは約140曲! どひゃあー、多い!
国籍はばらばらですが、じつは彼らには密接なつながりがあります。
1719年にナポリから招かれ、ポルトガル宮廷に仕えていたドメニコ・スカルラッティは、
ある日、王の弟ドン・アントニオから、一人のポルトガル人の若者をレッスンするよう依頼されました。
その若者の演奏を聴いたスカルラッティは驚嘆し、「私のほうこそ彼に教えてもらわなくてはならない!」と叫んだといいます。
その若者こそカルロス・トシキ・・・じゃなくってカルロス・セイシャス Carlos Seixas!
スカルラッティの言葉どおり、二人は師弟というより、音楽家として互いに影響しあう仲となったそうです。
しかしスカルラッティは1729年、スペインに嫁ぐバルバラ皇女に同行しポルトガルを離れたため、二人の交遊は数年間で終わりました。
ちなみにスカルラッティはスペインで、こんどはソレルを弟子にすることになります。
その後、残念なことにセイシャスはわずか38歳で亡くなり、
さらに1755年にリスボンを襲った大地震により、その作品の多くは失われました。
それでも100曲あまりのハープシコード・ソナタが残ったのは幸運といえましょう。
セイシャスのソナタの特徴は、激しいリズムと躍動感。
あるいは息もつかせぬほどの疾走感。
長調作品の堂々たる晴れやかさも魅力ですが、短調作品にこめられた激情と哀感が聴きものだと思います。
吹き荒れる嵐のような第24番ニ短調。
いきなり3オクターブの下降から始まり、流れるように走り抜ける第27番ニ短調の第1楽章。
どぎつい不協和音に一瞬どきりとする第34番ホ長調の第1楽章
憂いに満ちた表情で疾走する第18番ハ短調
ほの暗い情熱を内に秘めた第42番へ短調。
第37番ホ短調第3楽章のメヌエットは、郷愁を誘う魅力的なメロディですが、40秒あまりで終わってしまい寂しさが際立ちます。
いっぽう第10番ハ長調の第1楽章は13分を越える大曲で、春の日差しのようなやわらかい光を感じさせます。
そして最後に収められた第50番ト短調は、同音連打が印象的な急速激情系の名品。
いやあもう素晴らしい曲ばかりです!
演奏も華麗でダイナミック、音の万華鏡を満喫できます!
気になるのはこの「セイシャス:ハープシコード・ソナタ 集」
「第1集」が2006年にリリースされたあと、いまだに「第2集」が出る気配がないこと。
ぜひとも全曲録音をお願いしたいところですが。。。。
(09.10.18.)
P.S. 2011年に第2集が出ました! → Amazon : Seixas/Harpsichord Works Vol. 2