オトマール・シェック/チェロと弦楽のための協奏曲
チェロ・ソナタ ほか
(クリスティアン・ポルテラ:チェロ 他)



Amazon.co.jp : Christian Poltera Plays Othmar Schoeck


男ドアホウ・ロマンティック一直線


男のほうが女より100倍ロマンティックだというのは、古来から揺るがぬ事実でありまして、
それが証拠に「男のロマン」という言葉はあっても「女のロマン」とはあまり言いません。
裏を返せば男のほうが女より100倍馬鹿であるということにほかなりませんが。

オトマール・シェック(1886〜1957)、先日取り上げた「ヴァイオリン・ソナタ集」では
20世紀前半に活躍した作曲家とは思えない、ロマンティック・エンジン全開ぶりを堪能させてくれました。
しかしシェックの音楽は、ロマンティックであると同時にどこか侵しがたい気品のようなものがあります。

今回は、チェロのための作品集。

「チェロと弦楽のための協奏曲」(1947)
第1楽章アレグロ・モデラートは、初期のブラームスのよう。
あるいはシューマンのチェロ協奏曲を健康的にしたみたい。
若々しく逞しい楽想がコンコンと湧き出る、よく歌うソナタ楽章です。作曲時60歳だけど。
むせかえるようなロマンの香り・・・やっぱり歌曲の人だこの人。

 

第2楽章アンダンテ・トランクイロは、シェックの面目躍如、ホントにこの人の緩徐楽章は沁みますねえ。
マーラーのアダージェットにチェロ独奏を乗せたような、絶美な音のタペストリー。叙情のきわみ。

 

第3楽章は短いスケルツォ、でも無骨です、なんか重いです。
軽妙なところが不足してます。
「自分は不器用な男ですから・・・」と高倉健の声でつぶやくシェックの姿が目に浮かびます。

 

第4楽章、物思いにふけるようなレントの序奏(これがまた美しい)に続き、モルト・アレグロの軽やかで明るいフィナーレ。
サン=サーンスのチェロ協奏曲を思わせる19世紀風後期ロマン派な感じで、とてもじゃないですが第2次世界大戦後に書かれた曲とは・・・。
でも、問答無用に美しうございます
馬鹿でロマンティックなオッサンの胸にはズキュンと来るのでございます。

 


「チェロ・ソナタ」(1956〜7)は、シェック最後の作品です。
全4楽章の予定でしたが、作曲者の死のために3楽章で中断。
絶筆となった第3楽章アンダンティーノ、柔らかく流れてゆく音楽は、まさに天上のメロディ。
20世紀も半ばを過ぎて、このような曲を書くとは・・・天晴れロマンティック馬鹿一代。 素晴らしい。

 第3楽章
 

余白には、シェックの歌曲をチェロとピアノのために編曲したものが6曲収められています(これがまた素敵!)。

 アイフェンドルフ歌曲集 作品30 より「余韻」
 

(07.12.24.)

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