オトマール・シェック/3つのヴァイオリン・ソナタ
(Simone Zgraggen ,vn  Ulrich Koella , pf)



Amazon.co.jp : Othmar Schoek: The 3 Violin Sonatas


「知らない曲だけどジャケットが綺麗だから買ってみよう!」という、いわゆるジャケ買い、私もよくやります。
それほど結果は悪くないと思います。
やっぱりジャケットに力の入ったCDは、内容も手を抜いてないのでしょうか。
「演奏イマイチだったけど、ジャケットにお金かけちゃったから、録りなおす予算ないなぁ〜、このままいくか!」
なんてことは・・・ないんでしょうかね?

ところで、このCDにショップで出会ったら、みなさまどうされますか。
三つ揃いのスーツを着た、血色の悪い独裁者みたいなオッサンが、こちらをじーっと見つめています。
右手を後ろに隠してるのがアヤシイです。拳銃でも握っているのではなかろうか。
さりげなく視線をそらして、「目、合わさんとこ・・・」とつぶやきながら立ち去るのが普通ですね。

ところがしかしっ!!

これが素晴らしかったのです。
オトマール・シェックOthmar Schoeck(1886〜1957)、スイスの作曲家。 ちょうど没後50年ですね。
名前も知りませんでしたが、繊細にして耽美、優しく流れる涼風のようなロマンティックな作品ぞろい、
ストラヴィンスキーより4歳も若いですが、作風は保守的で、後期ロマン派・保守本流。
ブラームスを流麗&叙情的にしたような、とても親しみやすい音楽です。
フランクルクーのソナタよりも美しい瞬間があちこちに。 す、すごい、傑作だ・・・。
遅い楽章の優雅さがとくに印象に残ります。
ご本人は主に歌曲の分野で有名なのだそうです。 確かにメロディセンス良いですね。

シェックは、シュテフィ・ゲイエルStefi Geyer(1888〜1956)というハンガリー生まれの女流ヴァイオリニストに片思いしていました。
ヴァイオリン・ソナタ作品16(1909)は彼女に捧げたロマンティックな作品。
恥ずかしいほどに美麗なメロディがいつ果てるともなく歌い続けられます。
サイコーです。

 ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 作品16・第1楽章
 (夢見るような、たゆたうような・・・)

ちなみに、彼のヴァイオリン協奏曲「幻想曲風」作品21も、やはりシュテフィに献呈されています。
彼女に会うために楽譜を手にハンガリーまで行ったシェック、
しかし彼女は演奏旅行中で不在でした シェック! じゃなかったショック!(というかそれくらい調べとけよ)。

結局シュテフィは別の男と結婚しますが、音楽家同士としての交流は生涯にわたって続いたそうです。
それってつまり「いいお友達でいましょう」ってことですか。 き、気の毒な男・・・。
そんなことを考えながら聴くと、なかなか胸に迫るものが。

次はぜひヴァイオリン協奏曲を聴かねばっ!(←何故に力が入る?)。

 ヴァイオリン・ソナタ ホ長調 作品46・第3楽章
 (2分を超える序奏に続くソナタ形式の激しいフィナーレ)


(07.12.24.)


P.S. 2019年1月現在、ご紹介したCDは廃盤です。下記のCDが入手しやすそうです。
      ↓
 

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Stefi Geyer(なるほど美人さんだ)
バルトークも彼女に惚れてヴァイオリン協奏曲第1番を捧げました(←でも振られた)


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